■有料老人ホーム活用のポイントを【CFPが解説】

──退職後の生活を進めるうえでポイントとなるお金の使い方を教えて下さい。

 退職後のお金の使い方で最も大切なのは、現役時代の支出感覚をそのまま持ち込まないことです。共働きで長く高収入を得ていた夫婦ほど、外食、趣味、車、被服費、旅行などに無理なくお金を使えていた経験があるため、退職後も同じような水準で使ってしまいがちです。

 しかし、年金生活では収入が大きく増えることは基本的に期待できないため、支出のコントロールがより重要になります。その際、まず見直すべきなのは日々の細かな出費ではなく、家賃、車の維持費、保険料、通信費などの固定費です。

 特に住居費と車は家計への影響が大きく、ここを見直せるかどうかで老後資金の持ちが大きく変わります。また、お金は「生活に必要な分」「楽しみのために使う分」「将来の医療・介護に備える分」に分けて管理すると、使い過ぎを防ぎやすくなります。暮らしの満足度を落とさずに家計を守るには、見栄や習慣で続いている支出から手をつけるべきでしょう。

──東京都の有料老人ホーム入居時費用相場は1008万円と高額です。一方で、千葉県や埼玉県に目を向けると入居時費用相場は470万円、320万円と東京都に比べると安価になります。東京都の有料老人ホームで暮らす場合のメリットとデメリット、地方の有料老人ホームで暮らす場合のメリットとデメリットはありますか。

 東京都の有料老人ホームで暮らすメリットは、まず医療機関へのアクセスの良さと、施設選択の幅が広いことです。都市部は介護付き、住宅型、医療対応型など施設の種類が比較的豊富で、本人の健康状態や希望に合わせて選びやすい傾向があります。また、住み慣れた生活圏の近くに住み続けられるため、通院や知人とのつながりを維持しやすい点も大きな利点です。一方で最大のデメリットは費用で、入居時費用や月額負担が高くなりやすく、老後資金への圧迫は避けられません。

 これに対して千葉や埼玉など東京近郊の施設は、入居時費用を抑えやすく、その分、医療費や将来の介護費に資金を残せるのが大きなメリットです。同じ予算でも、より広い居室や手厚いサービスを選べる可能性もあります。ただし、今の生活圏から離れることで、通院先の変更や面会頻度の低下、地域とのつながりが薄れることによる孤立感が生じることもあります。老人ホーム選びは単純に「高いか安いか」ではなく、費用、医療、面会のしやすさ、本人が安心して暮らせる環境かを総合的に見て判断することが大切です

【記事前編】では、夫婦間でお金の話をする際に重要となるポイントや年金暮らしの夫妻が投資を行う際の鉄則をCFP宮岡秀峰氏が解説する。《【記事前編】はこちらから》

※税理士法人アクシア代表社員で、公認会計士・税理士、CFP資格を持つ宮岡秀峰氏

宮岡秀峰(みやおか・しゅうほう)
公認会計士、税理士、行政書士、CFP資格(日本やアメリカなど世界各国・地域で認定されている国際的なファイナンシャル・プランナーの最上位資格)。税理士法人アクシア代表社員、アクシア公認会計士事務所代表。公認会計士として会計・財務の視点から中小企業支援に取り組むほか、相続・事業承継分野にも幅広く携わる。講演や税務相談の実績も豊富で、会計・税務分野の書籍共著、雑誌寄稿も行なっている。

税理士法人アクシア 公式HP:https://axia.or.jp/