■退職金を使って繰上返済すべき?【CFPが解説】

──長村さんは2000万円の退職金を受け取っています。住宅ローンが4年分残っていますが、繰上返済を行うべきなのでしょうか。

 いきなり全額の繰上返済をするのは慎重であるべきだと思います。たしかに繰上返済には、総返済額を減らしたり、完済時期を早めたりするメリットがあります。ただ、長村さんのように65歳まで年金受給までの空白期間があるケースでは、いちばん大事なのは「利息を減らすこと」以上に、「毎月の資金繰りを安定させること」です。退職金は一度減らすと取り戻しにくいお金ですから、まずは生活費の予備資金をしっかり残すべきです。

 判断のポイントは、ローン金利、手元資金、毎月返済の重さの3つです。金利が低く、退職後4年間の生活費に不安があるなら、無理に繰上返済しない選択は十分ありです。一方で、月6万円の返済が家計を強く圧迫しているなら、全部返してしまうより、毎月返済額を減らすタイプの一部繰上返済を検討するほうが現実的です。

 住宅ローンの繰上返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」がありますが、継続雇用期の家計では、利息軽減の最大化よりも、月々の負担を下げる発想のほうが合っています。

 退職金の使い道としては、まず1~2年分の生活予備資金を確保したうえで、残額の中から一部繰上返済をするかどうかを金融機関の返済シミュレーションで確認して決めるのが堅実です。

──継続雇用となり、現役時代と給与体系が変わりました。給与明細を見る際に気をつけるべきポイントはありますか。

 給与明細でまず見てほしいのは、「何が減ったのか」をはっきり確認することです。再雇用後は基本給だけでなく、役職手当、家族手当、賞与の計算方法などが変わることが多く、本人が思っている以上に支給の中身が変わっています。

 次に大事なのが、健康保険料や厚生年金保険料が、再雇用後の給与水準に合った金額になっているかどうかです。会社が所定の手続きをしていれば、保険料は新しい給与に応じて見直されます。また、住民税は毎年6月に切り替わるので、その時期の明細は特に要確認です。さらに、高年齢雇用継続給付の対象なのに申請漏れになっていないかも、一度確認しておきたいです。

【記事前編】では定年後の家計の見直し方や定年後に必要となるお金についてCFP・宮岡秀峰氏が解説する。《【記事前編】はこちらから》

※税理士法人アクシア代表社員で、公認会計士・税理士、CFP資格を持つ宮岡秀峰氏

宮岡秀峰(みやおか・しゅうほう)
公認会計士、税理士、行政書士、CFP資格(日本やアメリカなど世界各国・地域で認定されている国際的なファイナンシャル・プランナーの最上位資格)。税理士法人アクシア代表社員、アクシア公認会計士事務所代表。公認会計士として会計・財務の視点から中小企業支援に取り組むほか、相続・事業承継分野にも幅広く携わる。講演や税務相談の実績も豊富で、会計・税務分野の書籍共著、雑誌寄稿も行なっている。

税理士法人アクシア 公式HP:https://axia.or.jp/