■森本慎太郎と先輩の熱い友情がいい!

 若林が東京でもがいている一方、山里は大阪の大学で学生生活を謳歌していた。学生寮に入り、同室の先輩・米原(宮下雄也/37)とバカやったり、合コンで知り合った子に恋をしたり。だけど、吉本興業の芸人養成所『NSC』への願書を出せないままでいた。

 机の引き出しに溜まっていく願書が、山里の芸人への想いが積み重なっていくように見えた。楽しい日々を送る中、いい雰囲気だった女子に告白してフラれてしまう。寮に帰り、米原にフラれたことを報告すると、うどん食いに行こうとドライブに誘われる。夜景のきれいな場所で米原が言ったのは、失恋の慰めではなく「おまえ、芸人にならんくてええの?」だった。

 米原は山里のすべてを見抜いていたのだ。山里の本心に問いかけ、大きな声で芸人になりたいと言わせ、NSCの願書とペンを差し出す米原、めちゃくちゃかっこいいではないか。

 そして、NSCの自己アピールタイムで山里はフラれた話をするのだ。面接官も受験生も、「なんでこんなところで失恋した話をするんだ?」と思っただろう。だけど、山里にしてみたら、これは得意な自虐ネタの披露なのだ。

 高校時代に自分がいかにモテないかをつらつらと語り、好きな女子に「山里くん、面白いね」と笑ってもらえたことがあっただろう。失恋も芸の肥やしにした山里が「(面接官に)気持ち悪いぐらいの熱量で言っちゃいました」と、米原に報告する表情が爽やかだった。そしてこれを、カラッと笑ってくれる先輩がいてくれて本当によかった。

 大学の先輩だけど、兄貴のような存在・米原がいてくれたことで自分を取り戻し、芸人になる夢を追いかけるきっかけをつかめた山里。そして、自分をよく知っていて、いつも隣にいてくれる春日がいる若林。2人が出会うのはまだ先だけど、それぞれの強烈なマイナス感情と爆発に揺さぶられていたい。(文・青石 爽)