■人質を取られたもっちゃん

 晴子(井川)は、田鎖兄弟に寄り添いながらも、31年前の事件について二人には語れない何かを知っている──。それは、中華料理店「もっちゃん」の店主、茂木幸輝(山中崇/48)も同様だ。

 第6話で辛島ふみ(仙道敦子/56)に耳打ちされた内容は、「あの兄弟から、証拠盗んできて」だったことが判明。証拠とは、津田(飯尾)が辛島金属工場の拳銃密造について書き記した取材ノートのことだ。

 だが茂木は、「やっぱりあいつらのことを裏切れない」と辛島家を訪れる。ふみは「みんなが幸せになるため」だと言って、茂木の母・茂木カル(三谷侑未/75)が映った写真を茂木に手渡す。それは、“母がどうなってもいいのか”というメッセージにも聞こえる。現にX上では、

《カルさん人質みたい……》
《カルさん使って脅されてるもっちゃんかわいそう》

 という声が上がる。

 第3話で映し出された31年前の工場火災のシーンで、倒れ込んだ茂木の左肩に刺青が見えていた。工場で行われていた拳銃の密造には五十嵐組が関わっており、そのことから、刺青が入った茂木も組員として関わっていた可能性が高い。

 ただ、あの弱気な茂木が、自らヤクザの門を叩いたとは考えにくい。その姿こそ描かれていないものの、父親が五十嵐組組員だったと思われる。茂木はその背中に導かれ組の扉を叩く。そしてカルもまた、組員の妻だった。

 田鎖夫婦は、五十嵐組と工場のトラブルに巻き込まれて殺害された。ふみ(仙道)が茂木にカルの写真を見せたのは、その実行犯がカルだからだ。自らの母と他人の兄弟、どちらが大切なんだと──。

 それを裏付けるかのように、第8話の公式サイトの予告映像では、工場火災で倒れた茂木の姿が再び登場する。また、元相棒の刑事が五十嵐組と癒着していた小池(岸谷)も、拳銃密造の関与が疑われることとなる。

 さらに、田鎖兄弟が復元した津田(飯尾)の取材ノートには、田鎖一家を処理しろというメモが──。徐々に輪郭を帯び始めた31年前の事件の真犯人の姿に、考察欲が止まらない。

ドラマライター・ジュン
幼少期から映画を観ることが好きで、物語そのものの面白さはもちろん、「この作品はどうやって作られているのか」という裏側にも強く惹かれてきた。過去にはドラマや映画のロケーションコーディネーターとして現場に携わり、ロケ地選びや撮影準備などを通して、作品作りのリアルを肌で学んだ。そうした経験を重ねるなかで、俳優の芝居、演出、脚本、美術といったさまざまな要素が積み重なり、ひとつの映像作品として立ち上がっていく瞬間に、ますます心を奪われるように。いまは旬のドラマや映画を欠かさずチェックしつつ、張り巡らされた伏線や演出意図を読み解きながら、物語の核心やその先の展開に思いを巡らせる時間を何より楽しみにしている。