■ネットの無料診断は「MBTI」ではない?
さらに、「日本MBTI協会」の公式ホームページを見てみると、
〈現在日本で出版されている日本版のMBTI(JPP株式会社刊)は国際規格に則って開発された性格検査であり、本来ホームページなどで簡単に回答はできないものですし、してはいけないものです〉
またまたちょっと待ってくれ! ホームページなどで簡単に回答はできないって……じゃあ、あの無料診断は、いったい何なのか?
これについて、前出の杉山氏は言う。
「第一にお伝えしたいのは、流行中の“MBTI診断”は公式なものではなく、“16Personalities”という、まったくの別物だということです。本来のMBTI診断とは、有資格者が行う心理検査であり、質問内容も結果の出し方も大きく異なるんです」
ネットでできるMBTI診断は、本来のMBTI診断ではない!?
「正式なMBTI診断とは、心理学者のユングが提唱した“ユングのタイプ論”が基になっています。例えば、脳のタイプで分かれる“内向”と“外向”、想像力のある“直観”と目の前の情報が得意な“感覚”など、人の認知傾向を科学的に分類した理論がベースなんです」(以下、カギカッコ全て杉山氏)
以後は誤解を避けるためにも、話題となった性格診断を『16Personalities』と表記するが、ではなぜ、そのような性格診断が、ここまで「ズバリ的中!」と言わんばかりに評判となり、流行り始めたのだろうか。
「かつての“血液型性格診断”に近いと思います。血液型の4タイプで性格が分けられること自体は立証されていない話なのですが、“あなたはこんな性格だよ”と言われれば、そんな気がしてしまうものです」
そして何より、ゲーム感覚で楽しめたということが、ここまで流行した要因ではないかと、杉山氏は言う。
「僕も学生に勧められてやってみたことがあるのですが、あくまでも“占い”に近いと感じた感想です。例えば、集計した人間の性格の平均値をとって相対的に分けているのか、それともポイントで絶対値をとったのか、科学的に正確かと言われると、わからない部分はありますね」
杉山氏いわく、こちらはあくまでも“ゲーム”として捉えるべきだということだが、ただ血液型性格診断が流行った当時と令和が異なるのは、社会の情報化が進み、それに関する人間の知能もグッと上がったということ。
「映像情報の増加やスマホの台頭により、この100年で脳の情報処理能力は急速に発達しています。だからこそ、今までのようなシンプルなタイプ分けよりも、複雑かつ科学的根拠がありそうなものを求める傾向ができているんです」
手軽に人間の性格の傾向を視覚化させる16Personalities。杉山氏は、人となりの外枠をなんとなく捉えるには問題ないと言うが、一方、“性格ラベリング”の弊害が発生するリスクはあると指摘する。
「心理学に知識のない人がネットの情報を鵜呑みにしてしまうと、“この人はこういうタイプだから自分に合わない”というような考え方から情報バイアスがかかり、その人の本来の姿を見られなくなりがちです。そのあたりは注意して楽しみたいところですね」
では、“その人の本来の姿”を見るには、どうしたら良いのか。
「人間の性格は簡単に分類できるものではありません。人それぞれ多種多様な性格があって、それぞれに良さがある。相手が自分にとってどんな存在かは、診断ではなく付き合い方でわかってきます。自分と相手が紡ぐ“物語”を見失わないよう、相手の言動をしっかりと見てから人を判断できるよう心がけたいですね」
人の価値観も性格も十人十色。提示された設問に回答する数分だけでは、相手との相性を測るには足りない。より長い年月をかけて、相手と向き合い続けることこそが、人間関係を深めるコツなのではないだろうか。
杉山 崇(すぎやま・たかし)
心理学者。臨床心理士。神奈川大学人間科学部・大学院人間科学研究科教授。就職支援部部長心理相談センター所長。日本心理療法統合学会理事。
子育て支援、障害児教育、犯罪者矯正、職場のメンタルヘルスなど、さまざまな心理系の職域を経験。心理学と脳科学を融合した次世代型の心理療法を目指す。心理療法家としても科学的心理学研究者としても、国から指導者レベルの評価を受けている心理学者。2児の子育て中。著書に『ウルトラ不倫学』(主婦の友社)、『読むだけで人づきあいが上手くなる。』(サンマーク出版)、『「どうせうまくいかない」が「なんだかうまくいきそう」に変わる本』(永岡書店)、『心理学者・脳科学者が子育てでしていること、していないこと』(主婦の友社)、『精神科医が教えない「プチ強迫性障害」という「幸せ」』(双葉社)など。