■面倒なテーマを面白く見せる工夫とは?

 考察系のドラマならまだしも、事件などは特に起きない本作が、配信で後伸びするのは珍しい現象だ。恋愛も、サスペンスもない、社会問題を内包した人間ドラマだが、回を追うごとに、本作の誠実でブレない作りの魅力が、じわじわと広がってきているのだろう。

 社会問題の提起というととっつきにくそうだが、本作では社会的弱者をめぐる状況を幅広く描いているため、まず多くの人に届きやすい。さらに、それらの問題に取り組む前、「提起するまで」にとどめているので、説教臭くはならず、全体の軽やかな雰囲気につながっている。そして「それを解決するのが政治の役割なんだ」と見せておいて、都知事選へという流れだ。これは見ていて盛り上がる。

 要するに、蛭田直美氏の脚本の構成がうますぎるのだ。今回も、雫石(山口馬木也/53)の流星(松下洸平/39)に対する「育ちが出ますので」というセリフと、五十嵐(岩谷)のあかり(野呂)に対する「あんたの10年を信じるよ」というセリフの対比や、最後にあかりが、政治家がつかざるをえない嘘をひっくり返すという流れがうますぎる。そのため、面倒そうな話でもスルッと入ってきた。

 もちろん、黒木、野呂をはじめとする演者はもちろん、『エルピス-希望、あるいは災い-』(同局系)の佐野亜裕美プロデューサー、『ひらやすみ』(NHK総合)の松本佳奈監督ら、スタッフの力も大きいのは言うまでもない。恋愛なし、サスペンスなしでも支持されるのは、ドラマ自体のクオリティの高さにある。(ドラマライター・ヤマカワ)

ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。