日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回、戸田氏が注目したのは、想定外すぎる昨今の盗難被害に迫ります!

 日本を支えるインフラのひとつが、信じがたい事態に直面しています。朝、顔を洗おうと蛇口をひねっても水が一滴も出ない。故障かと思いきや、屋外のメーターボックスを開けると、そこにあるはずの水道メーターが跡形もなく消えている──。

 そんな、まるでフィクションのような「水道メーター盗難」が全国各地で猛威を振るっています。被害の広がりは東京都や神奈川県といった首都圏から、静岡、兵庫、山口、福岡に至るまで、文字通り日本列島を縦断中。犯人の狙いは、内部に使用されている「金属」に他なりません。なぜ、重くてかさばる水道メーターが狙われるのでしょうか。

 その最大の要因は、世界的な「銅」の価格高騰にあります。水道メーターの本体には、真鍮(しんちゅう)や青銅(せいどう)といった銅合金が使われており、これらはリサイクル資源として非常に純度が高く、高値で取引される傾向にあります。特に近年のデジタル化や電気自動車の普及に伴い、導電性に優れた銅の需要は激増。1トンあたりの国内価格が数年前の3倍以上に跳ね上がる局面もあり、窃盗犯にとって水道メーターは「道端に転がっている現金」も同然の存在と化しているのです。

 犯行の手口は驚くほどシンプル。熟練した人物であれば、レンチ一本で接続部のナットを緩め、わずか1分足らずでメーターを外してしまうそう。被害の多くは団地や集合住宅の空き室に集中しており、入居者がいないために水漏れが発生しても発覚が遅れるという、管理の盲点を突いた卑劣な反行が目立ちます。

 中には、空き室を示すポストの養生テープを「獲物」の目印にしているケースも……。静岡県内では短期間に440個以上、下関市では1300個以上が盗まれるなど、もはや個人の犯罪の域を超えた「組織的な金属ハンティング」の様相を呈しているのが現状です。