■スリリングさはもはや不要の『月夜行路』
なんてことない謎解きだったが、今までで一番、文学が内容に絡んでいた。相続争いのエピソード自体は地味だったが、だからこそ、夏目漱石の名言や小説のセリフなどを、たっぷりフィーチャーする余地があったのだろう。ルナ(波瑠)と涼子(麻生)のコンビ感もしっかり出来上がっていて、今回のバランスが本作では理想的かもしれない。
最終回の本筋であろうルナと父との関係修復も、結局、パソコンのパスワードを解くのがクライマックスになるという、緊迫感のないネタで、そもそも高校時代の同級生の刑事・田村(栁俊太郎/35)に「わざと引き延ばしている」と指摘されるほど、ルナは積極的ではない。だが、それは大した問題ではない。
ルナのバー「マーキームーン」でワイワイやっていると、事件が起こり、刑事・田村と元刑事・小湊(渋川清彦/51)が都合良く機能し、涼子がルナにスイーツを差し出すナイスアシストという流れ。意外性やどんでん返しはないが、その代わりに安心感、心地よさがあり、それが本作の魅力になっているのだ。
最近の日本テレビの“水曜ドラマ”枠は、独特な世界観の恋愛ものだった『冬のなんかさ、春のなんかね』や、サスペンスと恋愛をフュージョンした『ESCAPE それは誘拐のはずだった』など、カラーを決めずに実験的なことをやる場になっている。それもあって、視聴率は低迷していたが、本作はウェルメイドな安定路線が大成功。同枠の救世主といえるだろう。
視聴者からは、続編やスペシャルドラマを望む声が多い本作。秋あたりに、再びルナと涼子のコンビを見てみたいが、最終回でドラマのタイトル「月夜行路」に隠された意外な仕掛けが明らかになるそうなので、まずは2人の文学を巡る最後の旅を、じっくり楽しむことにしよう。(ドラマライター・ヤマカワ)
ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。