「俺らは大損ってことですか」

 都内の一部上場企業の子会社で勤務する藤田芳樹さん(50・仮名)が大声を上げたのは3月半ばのことだという。普段は静かなオフィスの雰囲気が一変した原因は給与制度の改定にあるという。今年から5万円も初任給がアップしたという藤田さん。その一方で藤田さんの顔色は冴えない。本来なら喜ぶべき基本給の引き上げを喜べないのにはどのような理由があるのか。今回は働く人のお金にまつわる問題を専門家と共に検証する。

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 経営陣から一律5万円の基本給アップが告げられたのは3月半ばのことだという。藤田さんがこう振り返る。

「基本給の増額と引き換えに会社からは退職一時金制度の廃止を告げられました。勤続年数が少ない若手は毎月の給与が大幅に上がるということで大喜びしていますが、私のように定年が近いベテラン社員にしてみたら、とても受け入れられない制度変更です」

 会社側としても一律全社員の退職金を0円にするわけではないという。現に退職一時金制度の廃止に伴い藤田さんが会社から手渡された説明資料にも「増額分の給与を退職金から差し引く」旨が記載されていたという。

 従来の制度であれば退職時に約2000万円の退職金を受け取れた藤田さん。一方で今後は月々の給料が5万円増額されるそうだ。藤田さんの残りの勤続年数は約10年だから、退職金からおよそ600万円が差し引かれるというのが会社側の説明だ。

「会社側は“退職時に1400万円の退職金が支払われるから安心してください”、“毎月の給料もアップするので損をしません”、“競合他社との人材獲得のために初任給を上昇させる必要があります”と繰り返すのですがどうも納得できなくって……」