■「松木さんの解説は、ある種の話芸」「(本田の解説は)選手目線ですごく面白い」――元テレ朝プロデューサーの分析
元テレビ朝日プロデューサー・鎮目博道氏は、松木氏と本田の解説について、こう分析する。
「松木さんは本当に解説が巧みな人なんです。私は、松木さんと2002年の日韓W杯でのフランス対セネガル戦を韓国・ソウルで観戦したんですが、そこで松木さんがルールや見どころを全部解説してくれたことがあるんです。それがサッカーに詳しくない自分が聞いてもとてもわかりやすくて面白く、かつ試合を楽しめる形で解説してくれて……。
松木さんの解説は、ある種の話芸として成り立っているとも言えると思います。職人の域で、他人には真似することができません。だから今回、松木さんの解説が聞けないのは個人的には残念ですね」(鎮目氏、以下同)
一方で、鎮目氏は本田の視聴者目線での解説を「プロの解説者とはまた違う視点」と言い、こう続ける。
「22年にABEMAでカタールW杯を生中継した時もそうでしたが、日本代表の選手たちのことをチームメイトとして知っている前提での解説というのは、松木さんとはまた違う、独自の面白さがありますよね。
本田さんの解説は、彼が驚いているとか注意しているとか、発言一つ一つが、観客目線では“感情の導線”になっていて、まるでサッカー選手と一緒に試合を見ている気分になれる。これは本田さんの持ち味ですね。それに、そもそも本田さんの個人的な、素の人格が面白いこともあって、喋りに“人格”が出ている点も非常に価値がありますね」
鎮目氏は「今後、大きなサッカーの試合では、本田さんの解説が必ず求められてくる立ち位置になると思います」とも指摘する。
「今回のオランダ戦は日本時間では早朝。応援する視聴者も眠い時間帯ですが、本田さんの一言一言の面白さ、それによる臨場感に夢中にさせられて眠気が吹っ飛んで、応援のボルテージも上がったのではないでしょうか。
あと、心の声というか。本田さんは、素直に自分の思ったことを叫んでる感じもありますよね。それは視聴者からすれば“一流の選手は、こういう時にこんなことを叫んでいるんだ。ピッチにいる日本代表も同じことを考えてるのかな”という感じにも受け取れる。それはとても面白い、特別な体験だと思うんです。
そうしたところから、本田さんは解説者としてもこれからの時代を背負っていくのかもと感じます。もちろん違いはありますが、ある意味で松木さんの後継者と言えるかもしれませんね」
元NHKアナウンサーの中川安奈(32)は本田の解説についてXで《本田さんはあえてわからないふりをして基礎的な質問をして実況に答えてもらうことで、あんまりサッカー詳しくない人にもわかりやすい放送にしてくださっているのでは》と分析していたが、鎮目氏は本田が「ハイドレーションタイム」を知らない様子だったことに触れて、こう指摘する。
「新しく導入された制度だから、これまでと違う光景が目の前で繰り広げられたとき、皆が”えっ?”と思うはず。そういう戸惑いまでも、素直に言語化できるというのは……喋りのプロならともかく、サッカー選手の本田さんがそれを自然にできちゃうところにセンスを感じます」
ちなみに、今回、テレビ朝日が日本代表の試合を中継をしないことについては、「放映権料の問題に加えて、今回のW杯は時差の関係もあって早朝に生中継されますから、ゴールデンなど夜帯に比べるとどうしても数字が取れない。それもあって泣く泣く諦めたのかもしれません」ということだった。
次のW杯は2030年にスペイン、ポルトガル、モロッコの3か国メインで行なわれる。そこでもまた、本田の解説を聞くことになるのかも。そして、松木氏の“復活”は――。
鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)