現在、都内で妻と暮らす小野田信之さん(79・仮名)は老後2000万円問題がワイドショーや新聞で取り上げられていた2019年当時のことをこう振り返る。

「当時受け取っていた年金は夫妻で約20万円。支出は月に25万円ありましたから毎月5万円、年間で60万円の赤字です。これはヤバいなと思いました」

 ところが翌年以降、小野田さんの家計に掛かる負担は大幅に削減されることになる。しかし、本来であれば固定費であるはずの月々の生活費。これが激減することなどあり得るのか。今回はお金の専門家と共に年金と老後の生活費の問題を検証する。

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 人生100年時代──。年間60万円以上の赤字が家計に計上されていたという小野田さんはこう話す。

「2019年に老後2000万円問題がメディアで頻繁に取り上げられていました。自分も年金受給者だったので、これは他人事ではないなと思いました」

 ところが、翌年以降コロナウイルスが世界中でまん延したことが家計に大きな変化をもたらす。小野田さんも外出を自粛。生活にかかる資金も大幅に減ったという。

「前年まで夫婦で月に5万円ほど使っていた遊行費が1万円以上減りました。定額給付金も夫婦で20万円も貰えたのでこの年は年金だけで暮らしても年間で1万円の黒字が出ました」

 年金暮らしの高齢無職夫婦世帯であっても年間に20万円の収入があり、旅行にも行かず、自宅にこもって生活をすれば日常の生活に必要な費用は年金だけで賄うことができるというのだ。

 一方で、コロナが明け日常が戻った現在、日常生活にかかる費用は再び増加している。

 総務省統計局が公表している家計調査年報のデータによれば、高齢者が1か月に必要な食費や水道費・光熱費は19年に8万6441円だったのが25年には10万2504円だ。この6年で生活に必要な費用は20%近くアップしていることになる。小野田さんが話す。

セブンイレブンの『手巻おにぎり ツナマヨネーズ』は2019年に税込み120円だったのが、現在では196円(税込み)と1.6倍以上に。日常に必要なお金は明らかに増えているんです。このまま物価上昇が10年、20年と続けば老後の生活に必要な資金はさらに増えてもおかしくないでしょう」

 事実、小野田さんの家庭も生活に必要なお金を年金だけで賄えたのはコロナ禍だった20年のみだという。

 今年の2月に第一生命が試算した高齢夫婦の老後生活に必要な資金は1528万円とされている。物価の上昇がこのまま続けば、再び高齢夫婦が老後の生活に必要な資金は2000万円を超えても不思議ではない。

 止まらぬ物価上昇の中、老後の生活に必要な資金をいかに備えるべきなのか。税理士法人アクシア代表社員で、公認会計士・税理士、CFP資格(日本やアメリカなど世界各国・地域で認定されている国際的なファイナンシャル・プランナーの最上位資格)を持つ宮岡秀峰氏が解説する。