相続人に引き継ぐ意思がなく、一定額の支払いを受けて国が引き取った「相続土地」。これについて財務省は、売買を促す新たな仕組みを導入する方針を固めた。

「これまで、国が引き取った土地は一般競争入札で買い手を募ってきたんですが、売却実績はほぼゼロ。そこで今回の財務省は、土地の評価額を3割程度下げ、その後も需要がなければ3か月ごとに1割ずつ減額する方針案を出したんです。下限の価格水準は当初の評価額の7%に設定。つまり、最大93%の引き下げが可能ということになります」(全国紙経済部記者)

 このように相続放棄される財産は年々増えている。

「最高裁判所が公表する司法統計によれば、相続放棄件数は2016年まで20万件以下だったのに対し、24年には初めて30万件を突破したんです」

 このように相続放棄が増える理由の一つには、相続税の負担が大きいという問題がある。たとえば、24年12月に54歳で急逝した中山美穂さんの総額約20億円と言われる遺産相続をパリ在住の長男が放棄したケースは記憶に新しいが、その相続放棄の原因は、高額な相続税と、決められた期限内に現金で納付しなければいけないためだったと言われている。

 遺産相続といえば、このように相続財産が大きいケースだけの話と思いがちだが、それに限った話ではない。相続放棄が増加するもう一つの背景には、親族のトラブル回避という理由も目立っている。実際に、準備がないまま相続を迎え、トラブルに発展するケースは少なくない。

 そんな相続トラブルを回避するために欠かせないのが遺言書だ。しかし、この遺言書を残す人は極めて少ない。「弁護士法人・響」の古藤由佳弁護士が言う。

「遺言書作成の要件は非常に厳しく、そもそも遺言書を作る人があまりいません。そのため、遺産分割の話し合いで揉めることは多いです」

 作成に難色を示す人が多い遺言書の実態は、いったいどのようなものか。

「最も簡単なのが、遺言者本人が一人で作成できる自筆証書遺言です。ただし、本文に加えて日付と氏名の自書も必要で、財産目録がある場合は、目録1ページごとに署名押印が必要になるんです」(前同)

 こうした項目を満たしていなければ、自筆証書遺言は無効になってしまう。また、認知症などによって遺言能力に問題があった場合や、偽造が疑われる場合も無効になるケースがあるという。そうした問題を防ぐためにあるのが、「公正証書遺言」だ。

「公正証書遺言は、公証人に遺言内容を直接伝え、2人以上の証人立ち会いのもとで作成されます。そのため、遺言者の遺言能力や、本人が作成したという事実が保証されます」(同)

 ただ、公正証書遺言の作成にはコストがかかる。必要書類の取得費用、作成手数料、証人の日当、公証人の出張費用など、一般的には総額で10〜15万円前後が必要なのだという。ちなみに、遺言者以外内容を知ることができない「秘密証書遺言」なら、それよりも比較的安価にできるが、この制度はほとんど利用されていないため、事実上、遺言は自筆か公証人に依頼するしかない。

 そこで、新たに導入される「保管証書遺言」。通称”デジタル遺言”だ。

「デジタル遺言の導入を含む民法改正案が閣議決定されましたが、この法案により、これまで認められていなかったPCやスマホ等で作成した遺言が有効になります。デジタル遺言は、2028年を目処に導入される予定です」(前出の全国紙経済部記者)