■ダイジェストのような『豊臣兄弟!』
村重を演じるトータス、そしてだしを演じる山谷の感情的なシーンは、いつものようにドラマチックに盛り上げ、絶賛の声も多い。エンタメに徹した本作らしい仕上がりだが、一方で、《え、ちょいまて。この時点で村重はもう有岡城にいなかったやろ?どうなってんのコレ?官兵衛救出時には村重は尼崎城やろ》など、史実上の流れを無視した構成に不満の声も多い。
感動や面白さ優先で、エピソードや登場人物の思惑ををあちこち端折っているのが、本作の特徴。ただ、そのぶん、後で利いてくる伏線が少なく、盛り上がりも瞬間的なので、熱しやすい一方で冷めやすい。クライマックスだけで作られたダイジェスト版を見ているようで、「あれをどう描くのだろう」というワクワクに欠けるため、従来の大河ファン、歴史好きからは不満の声が多い。
ただ、そのわりに、明智光秀(要潤/45)の本能寺への布石だけは、ちょこちょこ挟んでいる。今回も信長(小栗)と光秀によるラストシーンのあと、「本能寺の変まで、あと2年―」というテロップで、カウントダウンを入れていて、本能寺を大きなヤマにする意図がうかがえる。ここにだけは、かろうじてワクワクがある。
しかし、本能寺の変の後はどうなるのだろうか。信長が亡くなった後、後継者を決める清須会議が行われ、光秀を討った秀吉(池松)が発言力を高め、天下とりへ舵を切っていくのだが、こちらも“過程”が端折られそうで心配だ。残りはまだ半年ある。おもしろ優先のこの作りで、下剋上サクセスストーリーが最後まで持たせられるのか、注目したい。
(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。