日本競馬界のレジェンド・武豊が名勝負の舞台裏を明かすコラム。彼のここでしか読めない勝負師の哲学に迫ろう。

(以下の内容は2026年6月22日に寄稿されたものです)

 何から書けばいいのでしょうか……。

 伝えたいことはたくさんあるのに、思いがあふれてきて、うまく言葉にすることができません。

 メイショウの冠をいただいた“盟友”メイショウタバル。父の代からお世話になりっ放しだった先代オーナー、松本好雄会長。酒を飲んでは、“いつか、一緒にGIを勝ちたいよなぁ”と夢を語り合ったアニキ、石橋守調教師。

 石橋厩舎でタバルを担当している上籠勝仁助手。生産者の三島牧場……。人が、馬がつないでくれたチーム・メイショウタバルは、固い絆で結ばれた最高のチームです。

 これまで、たくさんのGIを勝たせてもらい、それぞれに特別な思い出が詰まっていますが、昨年勝ち獲った宝塚記念は、さらに特別な勝利でした。

 連覇のかかった今年は、昨年8月に亡くなった松本好雄会長と交わした約束、凱旋門賞に向けての第一歩。

 ファン投票第2位。2番人気のメイショウタバルが引き当てた枠番は、8枠16番。逃げ馬にとっては不利な枠にも思えますが、阪神の芝2200メートルは、発走地点から1コーナーまでの距離が509メートルあるので、皆さんが思うほど気にはなりませんでした。

 馬の仕上がり、レース当日の精神面、馬場状態、レース展開……勝つときというのは、すべてがうまくいくものですが、この日はもう一つ。発走20分ほど前に、突然の大雨に見舞われ、馬場状態が、良から一気に重まで悪化したことも、良いほうに働きました。

 勝利ジョッキーインタビューで、「松本会長が天国から雨を降らせてくれたのかなと思う」と言いましたが、もしかすると本当に、そうだったのかもしれません。いや、きっと、そうです。