■“虎キラー”小笠原慎之介獲得に隠されたメッセージ
そんな“橋上色”の一端が垣間見えたのが、大卒2年目の俊足内野手・浦田俊輔(23)と、日本ハムで首位打者も獲った巧打者・松本剛(32)の1・2番。
前者は、交流戦終了時点で盗塁数リーグトップ。阿部前監督からは、すでに見切りをつけられていた感もあった後者も、橋上体制でスタメン復帰。打率.365で見事、交流戦の首位打者へと駆け上った。
「ここへきての彼らの台頭は、まさに辛抱強く待てる橋上さんだからこそ。代打起用の丸佳浩(37)が逆転満塁アーチで応えたように、ベテランの使い方もうまい。見切りの早い阿部さんが監督のままなら、こうはならなかったはずですよ。
DH制時に、5本塁打とパンチ力に定評のある佐々木俊輔(26)を9番に置いたあたりからも、野村IDらしい嫌らしさは感じましたね」(球団スコアラー)
さらに6月12日には、元中日で、今季はナショナルズ傘下2Aでプレーする左腕・小笠原慎之介(28)を獲得するとの一報も。
中日時代の小笠原と言えば、通算防御率3.62と、対阪神戦で安定した投球を見せてきた“虎キラー”。それだけに後半戦の救世主との期待も高い。
「ただ、日本復帰はあくまで向こうで通用しなかった結果。ヤクルトでも2軍暮らしの青柳晃洋(32)の例もある。現状は“活躍してくれたら儲けもん”程度の評価が妥当でしょう」
そう冷ややかに語る球界関係者の一人は「だが、しかし」と、こう続ける。
「小笠原クラスの大物を、この段階で補強したというのは、すなわち橋上体制でも優勝を目指すという読売グループの意思表示でもある。その点では“今季限り”とされる橋上さんも、心おきなく勝ちにいけるんじゃないですか」
サッカーの祭典よりも熱い三つ巴。名監督のDNAを継ぐ指揮官によるセ・リーグの覇権争いはどうなるのか。
【後編】離脱者続出の王者・阪神が抱える“ドラ1カルテット”の弱点や、疲れも出てくる後半戦でヤクルトがどこまで持ちこたえられるのかなど、「野村チルドレン」の指揮官が率いる残り2球団の裏情報を詳報する。《【後編】はこちらから》
伊原春樹(いはら・はるき)
1949年1月18日、広島県甲奴郡上下町(現・府中市)生まれ。北川工高(現・府中東高)から芝浦工大を経て、ドラフト2位で71年西鉄ライオンズに入団し、内野手として活躍。76年から巨人に移籍したが、78年にライオンズ復帰。80年限りで現役を引退し、翌年から99年まで西武で守備走塁コーチなどを務め、黄金時代を築いたチームの名3塁コーチとして勝利に貢献。2000年の阪神コーチ、01年の西武コーチを経て、02年に西武監督就任1年目でリーグ優勝を果たす。04年にはオリックス監督、07年から10年まで巨人ヘッドコーチ。14年の西武監督など歴任し、通算14回のリーグ優勝、7回の日本一を経験している。