■開幕からアクセル全開のヤクルトは失速?
それより以前、野村ヤクルトで指導を受け、引退後も楽天でのコーチ・監督として、通算13年間にわたり深い師弟関係を結んだ池山隆寛監督(60)率いるヤクルトは、どうか。
「開幕からここまで誰もが驚く快進撃。プロ6年目の左腕で、育成契約からはい上がった山野太一(27)はすでに7勝。3年目右腕の松本健吾(27)も5勝を挙げています。
育成出身の5年目・岩田幸宏(28)も俊足巧打で、一気にブレイクの兆しを見せるなど、若手の才を見抜いて生かす手腕は、まさに野村野球をほうふつさせる」(スポーツ紙デスク)
交流戦では6勝11敗1分と、やや勢いに陰りは見えたが、最終カードでは好調のソフトバンクを相手に2勝1敗と勝ち越し。14日の最終戦では、エース奥川恭伸(25)が7年目にして、レギュラーシーズン初完封も成し遂げた。
ヤクルトOBでもある前出の野口寿浩氏が続ける。
「潜在能力の高い選手は数多いが、故障などで、それが長続きしないというのがヤクルトというチームでもある。ここまでは想像以上に持ちこたえているが、今後は疲れも出てくる。選手を乗せるのがうまい池山監督と言えど、この勢いを持続するのは難しいのでは」
その言葉通り、6日の日本ハム戦で、実質的な先発3番手だった高梨裕稔(35)が肉離れで登録抹消。リーグ連覇した2022年以降、たび重なる故障に苦しむ塩見泰隆(33)も、13日の敵地ソフトバンク戦で本塁打直後に負傷交代。先行きは依然、不透明だ。
「若い選手が多いだけにチーム全体がヘバってきたときの歯止め役が現状は不在。
茂木栄五郎(32)あたりが“外様”という遠慮を捨てて、その役割を担えるかどうか。先発陣もフルシーズンの経験がない投手ばかり。頭数が6人では到底、足りないのが実情です」(前同)
そうなると、昨季優勝の経験値、地力で勝る阪神がやはり、わずかに優位か。
元阪神コーチの伊原春樹氏は「大きく引き離すとまではいかないだろうが、三つ巴なら最も余裕があるのは阪神」と言う。
野口氏も、「離脱者が戻れば」との前置きのうえで「阪神有利」とし、こう続ける。
「現状は三つ巴だが、巨人の好調については、監督交代という“劇薬”による一時的なブースト、と見ることもできる。ヤクルトも開幕からアクセルをベタ踏みしての今ですし。
その点からは、上がり目があるのは阪神。チーム状態が悪いながらも、首位争いのこの位置を今もキープできているわけですから」
野村阪神でプロの門を叩いた若き藤川監督が率いる昨季の覇者を、“野村ID”の申し子2人が、いかに攻めるか。セ界大戦の行方から目が離せない。
【前編】ヤクルト、阪神、楽天の3球団で、延べ12年にわたって野村克也監督の教えを受けてきた“正統後継者”とも呼べる橋上秀樹監督代行が率いる巨人の打順に隠された「ID野球の影」などについて詳報している。《【前編】はこちらから》
野口寿浩(のぐち・としひろ)
1971年生まれ、千葉県出身。習志野高時代に高校通算11本塁打を記録し、89年オフにドラフト外でヤクルトスワローズに入団。98年に日本ハムファイターズへ交換トレードで移籍し、監督推薦でオールスターに初選出。99年には正捕手として130試合に出場。翌年には最高打率.298を残し、得点圏打率もリーグトップで、「ビッグバン打線の恐怖の8番」と恐れられた。捕手としても盗塁阻止率.423を記録し、二度目のオールスターゲーム出場。03年にはトレードで阪神タイガースに移籍し、翌年10月4日の広島戦では井川慶とバッテリーを組んでノーヒットノーランを達成した。08年には再取得したFA権を行使し、横浜ベイスターズへ移籍。引退後は、17年にヤクルト2軍バッテリーコーチ、18年は1軍バッテリーコーチを務めた。
伊原春樹(いはら・はるき)
1949年1月18日、広島県甲奴郡上下町(現・府中市)生まれ。北川工高(現・府中東高)から芝浦工大を経て、ドラフト2位で71年西鉄ライオンズに入団し、内野手として活躍。76年から巨人に移籍したが、78年にライオンズ復帰。80年限りで現役を引退し、翌年から99年まで西武で守備走塁コーチなどを務め、黄金時代を築いたチームの名3塁コーチとして勝利に貢献。2000年の阪神コーチ、01年の西武コーチを経て、02年に西武監督就任1年目でリーグ優勝を果たす。04年にはオリックス監督、07年から10年まで巨人ヘッドコーチ。14年の西武監督など歴任し、通算14回のリーグ優勝、7回の日本一を経験している。