■精神科や心療内科では「直精」問題が浮上

 こうした動きは美容分野に留まらず、精神科や心療内科の領域でも、研修後に直接クリニックへ就職する「直精(ちょくせい)」という現象として現れています。経験が浅いまま雇われ院長などに就くケースも見られ、医療の質の担保という面で問題視されているのが現状です。

 国会でも昨年12月の参院本会議において、医師1人の養成に多額の公費が投じられている背景から、国家資格が医療の根幹に使われないことへの社会的損失や、特定の診療科への偏りに対する危惧が示されました。さらに、人気インフルエンサーの若手医師が「保険診療の働き方は自分に合わない」として美容外科医への転身を発表した際には、ネット上で批判が噴出する一幕も……。

 ネット上でも、《多額の税金を使って育成された医師が、命を救う現場ではなく、最初から効率よく稼げる美容に流れるのは複雑な気持ちになる》《いざ自分が大きな病気をしたときに頼れる優秀なお医者さんが減ってしまうのは恐ろしい》《ホームページを見ても医師の経歴や専門医資格の記載がないクリニックが増えていて、受診する側の見極めが難しくなっていると感じる》といった声が上がっています。

「一般医療の現場で疾病と向き合い、患者や家族との関わり方、合併症などの不測の事態への対処法を学ぶ期間は、医師としての責任感や志を育むために不可欠なはず。また、十分な臨床経験を積まないまま自由診療の現場に立つ若手が増えたことで、技術や知識不足によるトラブルのリスクも指摘されています。こうした事態を防ぐためにも、若手医師の選択のあり方についての議論が、今後さらに必要になるのではないでしょうか」(医療ジャーナリスト)

 直美という選択は、激務や苦労を避けて効率性を重視する現代の世相を映し出しているのかもしれません。自由な職業選択の権利がある一方で、命の現場から離れた若い医師たちのキャリアパスが、今後の日本の医療体制や医師のあり方にどのような影響を与えていくのか、その動向が注目されます。

トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。