■敗者を切り取るスポーツ報道に元テレビ局Pは「“無神経な踏み込み”ではない」
元テレビ朝日プロデューサーで、スポーツ報道にも関わってきた鎮目博道氏はこう話す。
「たとえば事件の報道でメディアが被害者の家族を執拗に取材することに対して、"やめておけ”といった声が上がるのは自然なことだと思います。スポーツでの敗者に対する報道も同様に取り上げられがちですが、今回に関しては必ずしもそうした“無神経な踏み込み”ではないのではと。
どんな試合だったのか、選手たちはどんな気持ちで挑んだのか、そして試合が終わって何を感じたのか、そういった事実をさまざまな形で伝えるのがメディアの役割で、映像は最もそれを生々しく映し出せる。
負けて涙を流す選手がいることも、その姿をかばう選手がいることも、重要な“情報”であって、それも踏まえてサッカー日本代表のありのままの姿を事実として伝えたということです。メディアとしての役割を忠実に果たしたと言えると思います」(鎮目氏=以下同)
今回の映像は、むしろ報道として大きな意義があると見ることもできるようだ。
「プライベートな空間であれば、そこまでメディアが入り込む必要はないのでしょうが、そこが競技場である限り、メディアはあらゆる事象をスケッチするもの。泣いている選手がいるのに、それを気づかず撮り逃がす方が、メディアとしては不誠実とも言える。泣いている姿も、かばう姿も二度と撮れない。それがリアルということです。
報道を受け取る側も、選手が泣いている姿を見ることで、その深い悔しさを知ることができるし、かばう選手がいる様子を見ることで、日本代表の結束力の強さを感じられる。その瞬間を映し、その姿が世に広まったのは、メディアが丁寧な仕事をした結果でもあるわけです」
メディアが槍玉に挙げられるような状況についてもこう話す。
「メディアとしても、敗者にスポットを当てた報道が非難を浴びやすいことはある程度理解しています。視聴者が感じた敗北の悔しさや、期待していた結果にならなかったモヤモヤの矛先が、メディアに向かいやすい現実もあります。ただ、勘違いしないでほしいのは、撮影したカメラマンは決して誤った行為をしたわけではないということ。今回の映像について、撮影者が過剰に批判されるようなことは、好ましくないと思います」
サッカー大国・ブラジルに敗れてしまったが、強い結束力を見せてくれた日本代表がさらに強くなってくれることを期待したい。
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)