合法か、倫理か”――問われる境界線

 ダークパターンについて、注意喚起を促す団体がある一般社団法人ダークパターン対策協会だ。そのメンバーの一人である石村氏は、ダークパターンのグレーさを指摘する。

 「ネットショッピング詐欺やフィッシング詐欺でもダークパターンの手法が使われていることがあり、それらは法律に違反する可能性が高いです。しかし、たとえば“1回限り”のつもりで購入したら実は定期購入だった、というケース。条件自体は書いてあるが、非常に小さく、気づきにくい場所にある。これは“書いてある以上は問題ない”とされる場合も多いです。そうなってくると倫理感の問題で止まってしまい、実質それを法で裁くのが難しいというのが現状です」

 つまり、多くは企業の姿勢次第。“グレーゾーン”に位置しているのだ。

 今回のサッカーW杯配信をめぐるDAZNのケースでは、同協会のホットラインにも多くの通報が寄せられたという。

 短期視聴のつもりが継続課金に移行してしまうケースや、解約手続きの分かりにくさに関する情報提供が相次ぎ、ダークパターンの“実害”を示す事例の一つとみられている。そしてそれは氷山の一角にすぎないとも石村さんは言う。

 「2024年の弊協会立ち上げ当時に実施した500人規模のアンケートでは、ダークパターンの何らかの被害に遭ったことがあると回答した人の割合が30.2%。被害額は3~5万円程度がボリュームゾーンでした。あくまで推計ですが、これを人口規模に当てはめると、被害総額は1兆円規模に達する可能性もあるんです。しかも厄介なことに、ダークパターンの名前からも分かる通り、自分が被害を被っていることに気がついていない人がたくさんいる。それがダークパターンの恐ろしいところです」

 一方で、企業側の言い分は、こういうものだそう。

 「企業としては“マーケティング努力”だという認識もあるでしょう。どこまでが許される工夫で、どこからが不当な誘導なのか。その線引きが問われているんです」(石村氏)

 引っかかってしまっても返金されるかどうかは企業側の判断と、今のところ、なすすべがないように思われるダークパターン。しかし光明もあるという。

 「現在、規制強化の議論が進んでいます。今年の夏頃に中間取りまとめが出て、来年には法案が提出される可能性があります」(石村氏)

 では今、我々はどうすべきか。石村氏はこう強調する。

 「最も大事なのは、契約前に一度“冷静になる”ことです。それだけでダークパターンを避けられる可能性が高まります」

 便利さの裏に潜む、見えにくい誘導。それに気づけるかどうかが、これからの消費者に求められている。