■濃密すぎる信長・光秀パート
明智光秀(要潤)が間を取り持った長宗我部元親(磯部寛之)を切ると織田信長(小栗旬)が言い出し、光秀のもとに足利義昭(尾上右近)から花押付きの「信長を討て」と命じる手紙が届き、いよいよ本能寺の変へと盛り上がってきた。平均世帯視聴率も11.4%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と、前回から0.3ポイント微増。折り返しのヤマ場に数字も上向いたのだろう。
一方で、秀長(小一郎/仲野)側の描写は、安藤守就(田中哲司)との慶(吉岡里帆/33)親子の別れと、ホームドラマに徹していた。ただ、この安藤の追放も、本能寺の変のあと、安藤父子が北方城を奪って再起を試みるも、領主・稲葉一鉄に討たれてしまうことを考えると、これまた本能寺の変への伏線といえるだろう。要するに、今の『豊臣兄弟!』は本能寺全フリ状態なのだ。
この状態に、《義昭と光秀と信長の地獄みたいな三角関係が劇的すぎて主人公パートが全部消し飛ぶのよ》などと、豊臣兄弟のエピソードが薄いという声も。本作は戦国時代劇と羽柴(豊臣)家のホームドラマが同居しているのだが、今のところ戦国の世の悲喜は信長が背負っている。その信長のいなくなる“アフター本能寺”は、いったいどう描かれるのか?
物語の後半は、感情的で自由奔放な秀吉に、温厚で調整能力に長けた秀長が振り回される流れに変わるのだろう。だが、ここまで信長の強烈なエピソードの数々を見させられた後では、薄く感じてしまうかもしれない。愛憎劇のような信長と光秀の関係を、小栗旬と要潤が好演しているだけに、なおさらのことだ。
ただ、少年漫画のような感動と面白さで、盛り上げるのがうまい『豊臣兄弟!』なので、それは杞憂に終わるかもしれない。今は近づきつつある、“本能寺の変”をじっくり楽しむことにしよう。次回、甥・信澄(緒形)の謀反を疑う信長の苦しみを察し、豊臣兄弟が家族とともに動くようだ。
(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。