■「1泊1万2000円と言われて耳を疑った」
そんな中、飛行機のファーストクラスを模した広々としたキャビン型や、専用のスマートフォンで室内の設備を操作できる高度な仕様、さらには睡眠中の心拍数やいびきを測定する睡眠解析機能を備えた施設など、付加価値を前面に押し出したプレミアムな施設が次々と誕生。従来の「狭くて寝るだけ」という負のイメージを覆し、高い快適性や防犯対策、充実した大浴場やサウナを提供することで、外国人旅行者や女性層を含む幅広い支持を集めることに成功しました。
しかし、この変化は本来の主要顧客であった日本のビジネスパーソンに思わぬ影響を及ぼすことに。週末や繁忙期、大規模なイベントが重なる日には、都内の主要駅周辺にある高級カプセルホテルが外国人観光客の予約で満室となり、料金も高騰。深夜に終電を逃し、疲労困憊の状態で宿を探すサラリーマンが、スマートフォンを手に絶望する光景が日常化しています。ビジネスホテルの素泊まりが1万円以上に値上がりし、代替手段として頼ろうとしたカプセルホテルまでもが1万円を上回る、あるいは完全に満室で入れないという事態は、都市部で働く人々にとって切実な問題です。
この状況には、ネット上でも「急な残業で終電を逃し、近くのカプセルホテルに飛び込もうとしたら1泊1万2000円と言われて耳を疑った」「昔の感覚でいると本当にどこにも泊まれなくなる」「深夜に泥のように眠りたいだけの人間にとっては、昔ながらの安い寝床を確保してくれる方が助かるのが本音」といった、困惑や不満の声で溢れています。
「インバウンド需要が拡大する中、カプセルホテルの高級化は事業者にとっては、合理的なビジネス戦略です。女性専用フロアの拡充やIoT技術の導入などにより、利用者の裾野が広がったことも市場の活性化を後押ししています。次の展開として、敷金や礼金、光熱費が不要で、大浴場やコワーキングスペースも利用できる長期滞在プランを打ち出した『カプセル住』という形も増えていくのではないでしょうか」(生活情報サイト編集者)
深夜に行き場をなくした仕事帰りの人々への受け皿をどう確保してくのか。企業や宿泊業界の新たな課題となりそうです。
戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。大手出版社でエンタメ誌やwebメディアの編集長を経てフリー。雑誌&webライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。