■青春の汗と涙すら富裕層の特権に?
これまでは家庭環境にかかわらず、誰もが平等にスポーツに親しめる場所として機能していた学校の部活動。それがお金を払える家庭の子だけがスポーツを続けられるという仕組みへ変わっただけなのだとしたら、これほど皮肉なことはありません。
経済的理由に子供たちが競技から排除されていく現状は、指導者が見つからない地域において結局は学校の教員がボランティア同然で土日の指導に駆り出されているという地域移行の形骸化問題と並び、この改革の大きな盲点となっています。
「教員の働き方改革という側面から導入された地域移行ですが、結果として保護者の財布に毎月数万円の負担が転嫁される状況を招いています。スポーツ庁のガイドラインは生涯にわたって豊かなスポーツライフを楽しめる資質を育むと掲げるものの、月謝が払えずに競技を諦める子供が続出する現状は、その理念から程遠いと言わざるを得ません。所得格差がそのまま子供たちの体験の差に直結しており、富裕層のための部活へと変質していく流れに、早急な補助金制度などのセーフティネットが整備されなければ、日本のスポーツ文化の土台そのものが崩壊してしまう恐れがあるのではないでしょうか」(教育ジャーナリスト)
人生100年時代を迎え、余暇の過ごし方や心身の健康維持の重要性が叫ばれる現代において、子供の頃に主体的な遊びとしてのスポーツに触れる機会は非常に高い価値を持ちます。しかし、学校教育の枠組みからスポーツを切り離したことで、家庭の年収という目に見えない壁が子供たちの前に立ちはだかることになりました。長時間の拘束から脱却する一方で、経済的な理由による不平等を生まないための具体的な方針を国や自治体が示さない限り、子供たちのための部活動改革の陰で、一部の家庭が置き去りにされてしまうのかもしれません。
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。