■懸念される「相続拒否による負動産地獄」の到来
特に懸念されるのが、親の遺産を子が引き継がない「二次相続」を契機とした、相続拒否による「負動産地獄」の到来です。最初の相続(一次相続)では配偶者が家を引き継ぐため居住実態が保たれやすい反面、その配偶者も亡くなる二次相続の段階になると、すでに別の場所に生活拠点を持つ子供世代が引き継ぐことになります。しかし、売却も賃貸もできない物件は、固定資産税や管理費だけが膨らむ「負動産」となるため、子供世代が相続を意図的に拒絶するケースが後を絶ちません。
この相続拒否の連鎖は、地方都市が急速に衰退していく大きな要因となっています。一戸建てだけでなく分譲マンションでも、二次相続で空き家となった部屋の管理組合と連絡がつかなくなり、修繕積立金や管理費の滞納へ直結する構造です。住人の高齢化と空き家化が同時に進むことで、エリア一帯が虫食い状に荒廃。所有者不明の部屋が増えれば、マンション自体の維持も不可能になり、周囲のコミュニティまで巻き込んで「地方都市のゴーストタウン化」を加速させる引き金になりかねません。
ネット上でも、「将来の修繕費高騰を見越して、築浅のうちに売り抜ける人が増えたら一気に暴落しそう」「海外の投資家が管理費を滞納したまま連絡が取れなくなったらどうなるんだろ?」「見栄を張って買ったツケが回ってきただけでは」「空からの景色に大金を払った結果、最後は足元から崩れていくのは皮肉」といった冷ややかな声も聞かれます。
こうした問題が深刻化して建物が完全に放置されると、最終的には行政が税金を使って強制的に取り壊す「行政代執行」に頼らざるを得なくなりますが、滋賀県野洲市で老朽マンションを解体した事例では、かかった費用約1億円の半分以上が回収しきれない事態が発生。一度管理不全に陥ってしまうと、後から持ち主に請求しても費用を回収することは不可能に近く、結果として自治体の財政、つまり市民の税金を圧迫することになりかねません。そのため、建物が手遅れの状態になる前に、空き家税や空室税といった経済的なペナルティを設けることで、所有者に対して適正な管理や流通を義務付ける仕組み作りが避けられない局面にあります。
「空室税の導入検討は、都市の持続可能性を担保するための切実な防衛策と言えます。資産価値の維持が困難になり市場から見放された物件を最終的に行政が解体する場合、その費用を全額回収することは事実上不可能です。だからこそ、所有者に一定の税負担を課してでも、適正な流通や管理を促す仕組みが欠かせません。今後は目先の開発だけに目を奪われるのではなく、戦略的な『出口』を見据えた法整備が急務になるのではないでしょうか」(不動産ジャーナリスト)
開発競争の時代は終わり、現在は過剰なストックの副作用に対処するフェーズへと移行しています。所有するだけで税負担を強いられる負動産地獄を回避するためにも、居住実態を伴わない不動産への課税強化は、これからの社会構造に即した必然の選択肢なのかもしれません。
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。