相撲界の内情や制度、騒動の行方を、元関脇・貴闘力が現場目線で読み解く。経験者だから語れる、大相撲のリアルが詰まったコラム。

 力士一行がパリ公演から帰って来た6月末、幕内・阿炎が都内のホテルで結婚披露宴を開いた。

 阿炎が夫人と入籍したのは、2020年のこと。だが、前年には友人・若元春との不適切動画が拡散して、相撲協会から注意を受ける出来事があった。

 そして、春場所からはコロナ禍に突入。

 究極の「事件」は、同年に起こった。

「不要不急の外出は不可」という相撲協会のガイドラインに違反して、接待を伴う飲食店で会食を繰り返したことが明るみに出て、激怒した師匠(錣山親方=元関脇・寺尾)は、阿炎に引退届を出すように言い渡した。

 協会は、それを預かったものの受理せず、阿炎に3場所出場停止などの処分を下し、監督責任を問われた師匠にも減俸の処分が下ったのだった。

 すでに妻子とマンション暮らしをしていた阿炎だったが、「更正」のため、部屋での生活を送ることになり、家族は離れ離れに……。同居が認められたのは、休場から土俵に復帰し、幕下から幕内まで番付を上げたときだった。

 しかし、以前から心臓を患っていた師匠は23年12月に60歳で急逝。このとき阿炎は、流れ続ける涙を拭うこともなく、

「師匠には、ご迷惑ばかりおかけしました」

 と、幕内優勝(22年11月)を遂げた際の表彰状を、師匠の棺の中に入れた。

 先日は、そうしたさまざまな出来事の末の、晴れの披露宴だったのだ。