加速する高齢化社会とともに、「介護」も日常生活で当たり前に耳にする時代となってきた。家族問題研究家の池内ひろ美さんは、介護の難しいポイントとして、「先が見えない」ことと、“押し付けあい”になりやすいことを挙げる。どれだけ結婚生活を長く続けていても、「介護」がきっかけで離婚するケースも増えているのだとか。池内さんが、「介護離婚」の実態を三井夫妻のケースをもとに明かす。
三井隆さん(無職/63歳・仮名)
妻・陽子さん(無職/63歳・仮名)
三井夫妻が隆さんの母と同居を開始したのは3年ほど前のこと。きっかけは隆さんの父が亡くなったことだった。当初は大きな問題もなく生活していたという三井夫妻。ところが、昨年、義母が室内で転び、肩と腰を痛めたときから在宅介護がスタート。現在、食事や着替えの介護はすべて陽子さんが行なっている。
義母がリハビリに通うときは夫の隆さんが自家用車を出してくれるが、病院に着いても夫は車中で待つだけ。仕方なく、妻である陽子さんが義母を支えながら病院の中まで連れていく。
「夫の姉や親戚が、“在宅での介護は大変でしょう”と、ときどき家に来てくれるのですが、彼らは義母の話し相手になるだけ。結局、彼らの食事作りまで私がやらなくてはいけないんです。自分の食べるものぐらい持ってきてくれたらいいのに……。介護を手伝っているふうを装いたいだけにしか見えないです」
介護が自分一人に押し付けられていることに、妻の陽子さんが疲弊を感じていたところへ事件が起こる。先日訪ねてきた夫の姉に、義母は「妻がお金を盗んでいる」と言い始めたのだ。
「夫の姉はそのまま信じて、何かと私を責めるようになりました。介護を始めてから、家の中も片付いていない、臭い匂いがするとか……」
さらに事態を悪化させたのは、夫の隆さんが自分の母の側についたことだ。妻である陽子さん1人に家事と介護のすべてが押し付けられ、陽子さんは徐々にふさぎ込み始めた。それでも、夫である隆さんを含めた親族たちは、「陽子さんが介護をさぼっている」と責め立てる。
陽子さんは、隆さんの母を施設に預けたいと提案するが、隆さんやその親戚は、世間体が悪い・カネの無駄遣いだから在宅介護をすればいいと言う。結局、陽子さんの姉が異変に気づいて心療内科を受診させ、陽子さんをしばらくの間実家で休ませると連れ帰った。現在は、弁護士に依頼し、夫妻の間で離婚協議が始まっているところだという。
介護をめぐり、親族の関係に亀裂が生じることは珍しくない。一体、どうすれば夫婦は離婚をしないでよかったのかを、家族問題研究家の池内ひろ美さんが解説する。