全国各地で相次ぐクマによる被害。中でも深刻なのが、住宅街など、人の生活圏に姿を現す“アーバンベア(都市型クマ)”だ。
「6月7日には、人口約51万人の栃木県宇都宮市にも、クマが出没。歓楽街のオリオン通りで、通行人の数メートル先を走り去る姿が確認され、市が危険鳥獣警戒本部を設置する事態に発展しました」(全国紙社会部記者)
山で出合うはずのクマが、今や、街で出くわすものに変わりつつある現実。
「環境省の調査によると、市街地など、人が日常的に滞在する場所で起きたクマ被害は、2020年度には37.6%にまで上昇。山林での被害34.8%を上回っています」(前同)
なぜ、クマが都市部に現れるようになったのか?
ツキノワグマの研究者で、3月に『クマは都心に現れるのか?』(扶桑社新書)を上梓した東京農工大教授の小池伸介氏は、次のように解説する。
「50年ほど前から、社会の変化とともに山間部の人口が減り、人の手が入らなくなった地域が増えたことで、クマの分布が広がりました。
そして、2010年頃には、人とクマの生活圏が隣り合うような状況ができて、人への警戒心が薄れたクマが増えていきました」
やっかいなことに、クマの“人慣れ”は一代限りで終わらない可能性があるという。
「人里に出ても攻撃されないのだと、クマは経験を通じて学習します。また、母グマが子グマにそういった行動を教えることもある。
母グマが人里でおいしいものを食べれば、その経験や場所が、子グマにも伝わるわけです」(前同)
次のページのマップが示す通り、千葉県や九州など一部地域を除き、現在、クマの目撃情報は全国の都市部にまで広がっている。小池氏も、「全国どこでもアーバンベアが出没する可能性はある」と指摘する。
「北海道や東北地方は、すでに都市部にクマが出没する可能性が高い。関東地方でも神奈川県小田原市など、大きな都市の近くで目撃情報が出ています。
昨年末には、静岡県熱海市でツキノワグマが捕獲され、話題になりました。
近畿地方では大阪府を除き、都市部近くの山で目撃されています。京都府の嵐山にも出没しており、観光地のすぐそばでも遭遇する可能性があります」(前同)
東京都では、23区外の西部地域を中心にクマの目撃情報が相次ぎ、その数は6月5日時点で32件にも上る。都は被害防止のため、約20年ぶりにツキノワグマ狩猟の解禁を検討中だ。
「東京は、奥多摩から多摩川が流れており、その中流域・上流域の河原は藪化・樹林化しています。
好奇心の強い若い個体が、何かの拍子に河原へ入り込み、藪の中を移動中に都市部へ出てしまうケースは十分に考えられる。実際、今年も多摩川で目撃された事例があります」(同)