■ガソリンやペンキの匂いがクマは大好き
では、そんなアーバンベアから、我々、人間はどう身を守ればよいのか。
「岐阜県では、カメラ映像をAI(人工知能)で解析してクマを判別し、撃退用スプレーを自動噴射する装置の実証実験を開始。
24時間稼働できるので、クマ対策の自動化の第一歩として注目されています」(前出の社会部記者)
群馬県では、クマ対策装置“モンスターウルフ”のテストが始まった。
「クマが接近すると、オオカミを模したロボット人形が強烈な光と音を出して追い払うという仕組みで、一定の効果が期待されています」(前同)
前出の小池伸介氏は、クマを人里に引き寄せないための工夫が必要だと語る。
「生ごみを外に置かないなど、クマにとっての食べ物をできるだけ街中に出さないこと。庭先に実るビワなどに引き寄せられることもあるので、あらかじめ収穫しておくのも有効です」
また、意外なものもある。
「実は、クマは、ガソリンやペンキ、防腐剤などの揮発性の物質の匂いが大好きです。燃料の一斗缶が置いてあると、興味本位で近づいてくることがあるので、農家や工場では、こうしたものを倉庫内で保管しておくことも重要です」(前同)
いざ、クマと遭遇した際は最終ページの撃退マニュアルを参照してほしい。野生のクマを50年研究する、日本ツキノワグマ研究所の所長・米田一彦氏は、次のように語る。
「クマは本来、臆病な動物ですが、至近距離で突発的に遭遇してしまった場合などは攻撃的になることがある。特に、都市部に出てくる個体は興奮状態にあることが多いので、まずは身を隠し、下手に刺激しないようにしましょう」
備えとしては、唐辛子由来の成分などを噴射して追い払う、“クマ撃退スプレー”が有効だという。
「私はこれまでクマに9回襲われましたが、多くの場面でスプレーに命を助けられました。今や、ハイキングなどで山に入る際の必須アイテムです。
ここ数年はクマ対策グッズの需要が高まり、効果のない粗悪品が出回るようになりました。購入する際は、実績のある北米製のものなど、信頼性の高い商品を選びましょう」(前同)
正しい知識を持つことが、人間とクマ、双方を守る助けになるのだ。
小池 伸介(こいけ・しんすけ)
1979年、名古屋市生まれ。2001年、東京農工大学農学部地域生態システム学科卒業。2008年、東京農工大学大学院連合農学研究科資源・環境学専攻博士課程修了。博士(農学)。専門は生態学。主な研究対象は、森林生態系における植物-動物間の生物間相互作用、ツキノワグマの生物学など。
米田一彦(まいた・かずひこ)
1948年、青森県十和田市生まれ。秋田大学教育学部卒業。秋田県庁生活環境部自然保護課勤務。86年に退職し、フリーのクマ研究家となる。島根、山口、鳥取県からの委託によるツキノワグマ生息状況調査(2000~04年)のほか、多数の助成により国内外でクマに係わる研究・活動を行う。青森県十和田市民文化賞受賞(98年)、第14回日韓国際環境賞受賞(08年)。著書に『クマ追い犬 タロ』(小峰書店)、『山でクマに会う方法』(ヤマケイ文庫)、『熊が人を襲うとき』(つり人社)など。