どんなに幸せに見えても、なんらかの問題を抱える家族は多いもの。なかでも、近年深刻な問題となっているのは「介護」だ。介護問題は当事者だけでなく、周囲の家族も大きく苦しめる。その原因として指摘されるのは、「終わりがみえない」点だ。
家族問題研究家の池内ひろ美さんによれば、近年、「介護をしたくない」という理由で、熟年離婚をするケースが増えているという。事実、厚生労働省の人口動態調査によると、2022年時点で同居20年以上の夫婦が離婚するケースは約3万9000件に上り、全体の23.5%を記録している。今回は40代以上の家族の間で頻発しているという介護離婚の問題を高岩夫妻のケースをもとに検証する。
高岩幸雄さん(会社員/48歳・仮名)
妻・理子さん(パートタイム/48歳・仮名)
大学の同級生同士だった高岩夫妻。卒業後すぐに結婚し、都内にマイホームを構えて、大きな問題はなく生活してきた。関東近郊に住む幸雄さんの両親とは、2人の子供が社会人になるまで、年末年始や学校行事などで数か月に一度は会っていた。しかし、子供が成長すると共に顔を合わせる頻度は減少。
そうしたなかで、71歳となる夫の父が飼い犬の散歩中に転倒。左足を骨折したため、入院となったという。
「父の世話で手一杯。しばらく犬の世話ができないので、父が退院するまでの間、犬の面倒をみてくれないかしら」
夫の母からの火急の頼み。事情が事情なだけに高岩夫婦は承諾したが、理子さんはそれまでペットを飼った経験すらない。それなのに、頼みの綱である夫の幸雄さんは全く犬の世話をしようとしないという。理子さんは、そんな幸雄さんの姿を見て離婚を決意したそうだ。
「犬の世話をしないぐらいで!?」と驚く人もいるだろう。しかし、妻が見ていたのは“その先”だった。妻である理子さんが話す。
「この人は、何かあったときに逃げるタイプなのかなと。自分の親が飼っていた犬の世話もできないのに、自分の親の介護をするわけがないと思ってしまったんですよね。私だって、人の親の介護なんてまっぴらごめんです。夫には妹がいますが、地方都市で家庭をもっているため、親の介護要員となると、絶対ウチになる。
ただ、いざ介護しなくちゃいけないとなった時点での離婚は、さすがに気まずい。それなら、いっそ今のうちに逃げておこうかと思いました」
幸雄さんは理子さんの決断に「まだ起こってもいない介護を恐れるのはおかしい。万一、介護となったら自分も協力するから、2人でやればいいではないか」と怒ったが、妻は用意周到だった。子供たちに離婚することを伝えた後、勤務先のパートから正社員への登用制度を活用し、生活費の目処がつけていたのだ――。
この母の決断を子供たちも応援。特に娘は「仕事ばかりで、子育てにも一切参加してこなかったパパのためにママが犠牲になる必要はない」との頼もしい“援護射撃”を口にしたという。
「じゃ、そういうことで」
妻はマイホームを飛び出し現在、一人暮らしを謳歌している。
こうした熟年離婚はなぜ起こるのか――。どうすれば避けられるのかを、家族問題研究家の池内ひろ美さんが解説する。