■介護生活を送る前に話し合うべきポイントを専門家が解説
夫の実家の預金を食い尽くさんばかりに遊び呆ける義理の妹の姿を見て、“危険”と未歩さんが感じるのは当たり前です。なぜなら、夫である巧さんの両親はどちらも80代。介護の必要は目の前まで迫っています。
介護は、想像以上にお金がかかります。26年6月に老人ホームや介護施設の検索サイト「ライフル介護」を運営するライフルシニアが公表した資料によれば在宅介護に必要となる費用は月におよそ4.8万円。しかも、在宅介護のために「介護離職」をする人も少なくありません。この場合、妻の収入の方が少ないからと妻が介護離職をするケースが大半です。
夫婦は妻の収入を絶たれた状況で貯金を切り崩しながら、介護にかかる費用を支払い、ときには介護に適したように住まいを改修する必要もあるのです。これだって自宅に手すりを設置したり、介護用のベッドを自宅に導入するだけで50万円ほどの費用が必要となるのが一般的です。
経済的、心理的な負担の大きさから介護生活を送った人の中には、「介護と看取りの先に親の遺産があるから介護を頑張ることができた」と口にする人もいます。
ところが、市川夫妻の場合、夫の妹が親から毎月の援助や不動産購入の際などに必要となるお金を受け取っているため、親の預貯金は目減りしているはずです。その一方で、将来介護施設の世話になるときには親の年金だけでは不足してしまい、補填をする必要もあるかもしれません。
事実、25年11月にライフルシニアが公表した資料では東京都の有料老人ホームの入居時に必要となる費用は平均して1008万円、神奈川県も714万円と決して安くはありません。老人ホームの入居だけで多額の費用が必要になる時代ですから当然、遺産も期待できそうにありません。
それだけではなく高額な介護費用を前に夫婦の老後資金計画も崩れるかもしれません。
経済的なことだけで離婚を決めるのは人として冷たいと思われるかもしれませんが、結婚生活の中でお金は大きな割合を占めます。夫の実家の財産をあてにするのではなく、自分たち夫婦が培ってきた財産を守るため、今の時代、妻が熟年離婚を決意することは珍しくもありません。
親の介護が始まる前に、夫婦間でこれから必要になる介護費用や老後の資金計画を話し合うことが介護前離婚を避けるためには重要です。
池内ひろ美(いけうちひろみ)
1961年生まれ。家族問題評論家。吉本興業所属。一般社団法人ガールパワー(Girl Power)代表理事。家族メンター協会代表理事。内閣府後援女性活躍推進委員会理事。これまで約4万人のカップルの結婚・離婚相談に乗ってきた。1996年より「東京家族ラボ」を主宰。『とりあえず結婚するという生き方』『妻の浮気』など著書31作品。