■「佐藤さんが橋本さんの楽屋に出入りできる状態にしていたことが大問題」元キー局Pが解説

 大事となってしまった今回の騒動。現時点までの報道、発表を踏まえて、元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏はこう話す。

「佐藤さんからすれば、自分が知らされていないことがおかしいと感じたのでしょうし、何も制約がなく演技できる人を相手に臨んでいたというのもあるでしょう。

 しかし、相手はトラウマを持つ女優さんなのに楽屋へ行って、思いの丈をぶつけてしまったと。報道・発表されているようなことを発したのであれば、それは許されるものではないでしょう。人は何の仕事をしても自由ですし、まして先輩で力の強い立場にいる俳優が後輩にそういうことを言うと、どれだけ傷つくか。しかも、第三者を介せずに楽屋に直接行って、ですよね」(鎮目氏、以下同)

 フジテレビが7月7日に公表した文書によれば、佐藤は4月8日に橋本の楽屋を訪れて、《あなたの過去の被害は不幸なことだけれども、と前置きした上で、女性俳優が身体接触に制約があることは事前に言うべきであったこと、男性俳優の友人にも相談したところ友人も女性俳優の方がおかしいという意見であったこと、また、演技の相手役に対し身体的接触に関する一定の制約を設けるのであれば俳優の仕事を続けるべきではなく、夫婦役の出演の依頼があってもこれを受けるべきではないと考えていることなどを伝えました》ということだ。

 そして鎮目氏は、フジテレビ側の対応についてこう指摘する。

「今回の文書からも読み取れますが、フジテレビの対応は、問題が起きてから事後的に対応していて、どれもこれも後手後手に回っている感じです。橋本さんに対する配慮について、佐藤さんのマネジャーの意向を組んだこともそうですよね」

 文書によると、フジテレビのプロデューサーは、橋本サイドから説明を受け、フジに判断を委ねる旨の回答があったことから、佐藤のマネジャーに対し、橋本サイドから共有された内容を佐藤にも伝えたほうが良いのではと申し出たという。

 しかし、佐藤のマネジャーが《状況は理解したものの、男性俳優本人(※佐藤)のドラマへの意欲が高く、当該実情を伝えると男性俳優の演技に影響が生じかねないため、本人の耳には入れない方がよいとの意向》を示したこと、プロデューサーとしても、橋本のプライバシーに深く関わる内容と認識していたことなどもあって、《男性俳優本人に共有するかどうかについて男性俳優の所属事務所側の意向を尊重いたしました》としている。

「常識的に考えて、トラウマを持っている橋本さんには特別な配慮が必要な状態だったことは間違いない。それをプライバシーの問題から伝えなかったということですが、さすがに共演者の、しかも夫婦役の俳優には伝えておくべきです。実際、佐藤さんがアドリブで距離が近かったことなどが、今回の文書からも感じ取れますよね」

 フジテレビの文書によると、橋本の所属事務所の社長は、佐藤がアドリブでの身体接触がある演技や他者との距離感が近いと感じた場面もあったことから、フジテレビのプロデューサーに対して、演技上の配慮に関する事項を男性俳優側に伝えているか確認したという。そして前述の経緯から伝わっていない可能性があるとしたことで、橋本の所属事務所の社長から当初申し入れた内容を男性俳優に伝えるよう要請があったということだ。

「つまり、橋本さん側はちゃんと配慮を申し出ていて、ドラマを制作するテレビ局側は俳優に、安全に仕事してもらうための配慮義務がある。しかし、それが甘かったのはフジテレビの責任としか言えないですし、対応が橋本さんの社長に指摘されてからというのは、遅すぎると思います」

 また鎮目氏は、佐藤が3月23日と4月8日の2度、橋本の楽屋を訪れていることはフジテレビ側の「大問題」と指摘する。

「普通に考えれば、双方に不信感が出たり、ハラスメント関連の事案では当事者同士の接触は絶対に避けないといけないです。特に、橋本さんにしてみれば業界の大先輩である佐藤さんにいろいろ言われるのはつらいでしょうから、ドラマを制作するフジテレビの人が間に入って、絶対に当事者同士で話をさせない、ことが正しい対応です。

 ところが、今回の文書によれば、楽屋で佐藤さんと橋本さんを2回も対面させてしまっている。楽屋や撮影現場を管理しているのはテレビ局ですから、佐藤さんが橋本さんの楽屋に出入りできる状態にしていたことが大問題なんです」

 佐藤が《僕は心から、もうフジとは関わりたくないです》と発した今回の騒動。今後もさまざまな報道が出てきそうな展開となっている。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)