■『VIVANT』とはバッティングしない内容

 本作は登場人物が多いうえ、DNAで過去と現在をつなげる設定など、かなり複雑な構造の物語になっているが、丁寧にじっくり描かれている印象でスムーズに入り込めた。発行部数が65万部を突破した大ヒット小説の魅力を損なわないよう、巧みな演者と手練れのスタッフにより、とても誠実に作られている印象だ。

 ミステリーということから、考察で盛り上げるのかと思えば、そうではなさそうだ。原作ファンからは《映像化で整理されすぎていて、正解を当ててる人がかなりいる。確かに分かり易すぎる》という声もあるし、公式も“ヒューマンミステリー”をうたっているので、制作側も流行りの考察路線で作るつもりはないのだろう。

 俳優陣も、山田涼介は、怒り、焦り、困惑、猜疑など、展開ごとに変わっていく感情を表現できていたし、堀田真由の純真さ、終盤の白石聖の緊迫感もドラマにフィット。義父役の佐々木や生物学者役の鈴木保奈美(59)も、ドラマの世界観を壊すことなく的確な演技を見せていて、全体に安心感がある。キャステイングにはなんの不満もない。

 要するに、ドラマとしてよくできている。数字がいいのはその証しだろう。強力なライバルになりそうな日曜劇場『VIVANT』(TBS系/7月26日午後9時~)は、前作同様にどんでん返しの連続で考察を煽るはず。そうなると、考察に頼らずヒューマンミステリーで勝負する本作は競合せず、視聴者をとられる心配はなさそうだ。3週早いスタートでファンを作っておけば、『VIVANT』を食う回も出てくるかもしれない。今後の展開に注目したい。

(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。