日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回、戸田氏が注目したのは、漁業問題に関してです。

 北海道の夏の風物詩であり、道南エリアの港町・函館市の代名詞とも言えるスルメイカ漁が、今年も極めて厳しい船出を迎えました。毎年6月1日に解禁されるこの漁ですが、初日の水揚げは各船ともゼロ。翌2日に予定されていた初競りは2年連続で中止となりました。その後、初セリが行われたのは予定よりも10日遅れとなる6月11日。イカ漁は回復の兆しが見えないままシーズンを迎えています。地域の基盤を支えてきた函館のスルメイカ漁獲量は、2008年にはおよそ9000トンを記録していたものの、2025年には約700トンにまで激減。かつての賑わいは遠く、地元の漁業関係者からはため息しか聞こえてきません。

 地域の海で何が起きているのでしょうか。主因として指摘されているのが、近年の海水温上昇や海流の変化に伴う回遊ルートの変動です。日本海を北上するイカの群れが、日本近海を避けるようにさらに北方や沖合へと生息域を移してしまった可能性が取り沙汰されています。これに追い打ちをかけるのが、近年の深刻な物価高。夜間に強い光を灯してイカを誘うイカ釣り漁は、大量の燃料を消費するため、1回の出漁だけで数万円規模の経費が吹き飛びます。原油価格の高止まりが続く中、網を上げても燃料代すら回収できない採算割れのリスクを恐れ、出漁そのものを見合わせる漁師が後を絶たないのが現状です。

 その一方で、近隣の日本海側や太平洋側の一部海域では、皮肉な現象が起きています。高級魚であるクロマグロの来遊量が急激に増加し、網が破れんばかりの勢いで押し寄せているのです。しかし、これが漁師たちの懐を潤しているわけではありません。皮肉にも、目の前の大漁がそのまま収益に結びつかない複雑な事情があります。