■漁業枠を超えたマグロはすべて海へ放流
漁業者を悩ませているのが、資源保護を目的とした厳格な漁獲枠の制限です。クロマグロは国際的な取り決めに基づき、国や地域ごとに年間の漁獲上限が極めて細かく設定されています。例えば、福井県では4月の解禁からわずか2週間で上半期の漁獲枠を使い果たし、瞬く間に水揚げ停止の措置が執られました。枠を超えて網に入ってしまったマグロは、どれほど高価であってもすべて海へ戻さなければなりません。巨体で重量のあるマグロを手作業で傷つけずに放流する作業は漁師にとって肉体的な負担が大きく、網が破損する二次被害も発生。魚影がいくら濃くても1円の収入にもならない状態が続き、資源の回復と漁家経営の維持をいかに両立させるかという重い課題が浮き彫りに。ネット上でも、海の異変に対し、《マグロがイカを食べてるから?》《燃料代が高騰している大変な時期なのに、目の前にいる高級魚を逃がさなければいけない漁師が気の毒》《資源を守るルールは大切だけれど、もう少し柔軟に枠を管理できないものか》《イカは贅沢品になっていくのかも》との声が聞かれます。
「クロマグロの漁獲枠制限は資源回復に寄与しているものの、来遊状況と配分が噛み合っておらず、短期間で上限に達する地域が出るなど歪みが生じています。定置網などで発生する予期せぬ混獲への放流負担や網の破損リスクに対し、救済策が不十分な点も否めません。自然が相手なので豊漁不漁は仕方ない部分もありますが、海が激変するなかで、柔軟なルール修正を急がなければ、地域の漁業コミュニティが衰退してしまう恐れもあります」(社会部記者)
農林水産省が公表した統計によると、2025年の海面漁業と養殖業を合わせた国内の生産量は過去最低を更新しました。地域の経済を守り、食卓から魚が消える事態を防ぐためにも、国や自治体による対策が急がれるところです。
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。