■開発エンジニア採用ではAIの影響も

 こうした高学歴ニートは、なぜ生まれてしまうのか。前出の岡本氏は「外部環境の変化」と「心理環境」の二つに要因があると話す。

「外部要因としては、就活の早期化やAIツールの普及による選考基準の高度化です。その変化に適応できず、立ち止まってしまう若者は多いです」

 そのときに若者を立ち止まらせてしまうのが、心理的な要因だという。

「例えば、これまで自分で物事を判断する経験が少なかった人。彼らは挫折に直面した際、働かない、つまり選択を放棄することで自己防衛を図ります。もしくは、過去のいじめ等のトラウマから、社会への恐怖心が拭えないケースもあります。就活のシステムが高速化・複雑化するほど、内面的な課題を抱えた若者が弾き出されやすいのが現状です」(前同)

 かつて高学歴は、いわば大企業への就職パスポートだった。だが、それも今や昔。「良い大学に入れば将来は安泰」という神話は、消えつつある。少子高齢化による人手不足と、日本企業のIT化の遅れが防波堤となっているものの、AIの波は目前に迫っている。

「すでに開発エンジニア採用においては、AIの影響が出ています。以前の採用基準は、IT未経験者だとしても大卒以上なら問題ありませんでした。それが“偏差値55以上、あるいはMARCHクラス以上”と、徐々に厳選され始めています。この流れは、あくまでAIが浸透し始めた現在の状態であり、今後さらに加速していくはずです。自ずと、高学歴ニートも増えるでしょう。一握りの超上位校を除き、学歴による差別化は減少していくのではないかと思います」(同)

 高学歴という肩書きは、もはやブランド力すら失いつつあるのだ。AIの普及は、今後の学校の価値観も変化させていくという。

「AIが瞬時に答えを出す時代だからこそ、採用側の企業はより一層コミュニケーション力を重視しています。そのため、今後の教育機関に求められる役割も変化していくでしょう。これまでは、“高偏差値の大学へ生徒を何人送り込んだか”が学校の価値でした。今後は“社会で通用する対人能力をどれだけ鍛えたか”が評価される時代になります。この対人能力を徹底的に鍛える教育カリキュラムを持つ学校は、従来の偏差値が高くなかったとしても、企業からのニーズが高まっていくはずです」(同)

 今後、日本でも増加するであろう高学歴ニートたち。だがAIは、いずれ高学歴という肩書きの価値すら消してしまうのかもしれない──。

岡本啓毅(おかもと・ひろき)
株式会社UZUZ代表取締役社長。学校法人UZUZ理事長。1986年生まれ、北海道出身。米国アラバマ州立大学ハンツビル校で宇宙物理学を専攻後、ベンチャー企業に入社。IT業界の営業を経て、2012年に第二新卒・既卒・フリーターなど若者の就職支援を手がける株式会社UZUZを設立。就職の悩みを解決するYouTube「ひろさんチャンネル」でも情報を発信し、若者のキャリア支援に取り組んでいる。