■虫よけスプレーの使い方で効果が違う
ただし、虫よけスプレーをしたのに蚊に刺された経験があるという人も多いはず。それにもいくつか原因があるのだと、前出の藤田氏は言う。
「濃度にも違いがあり、濃度が高いほど効果が続く時間が長くなります。現在の市販品ではディート30%、イカリジン15%が高濃度タイプの目安です。また、汗をかいたり、タオルで拭いたり、水に濡れたりすると落ちるため、必要に応じて塗り直すことも大切です」
これを知っていても安心するのはまだ早い。
「肌にシュッと吹きかけただけではムラができやすいんです。蚊は薬剤がついていないわずかな隙間を狙ってくるので、露出している腕や足、首筋などに、肌表面がしっとりする程度に散布し、その後、手のひらで塗り広げるのが効果的です」
耳の裏、首の後ろ、足元は忘れやすい一方で、蚊に刺されやすい場所でもある。スプレーした“つもり”でも、塗れていない場所があれば、蚊はそこを逃さない。
一方、虫よけスプレーといっても、ツンとした刺激臭が苦手な人のためのアロマ系やボタニカル系のスプレーもあるが、
「こちらは効き方が弱く、持続しにくいと考えたほうがいいです。香りで一時的に人のにおいをマスクすることはあっても、ディートやイカリジンのように、蚊のセンサーを長時間乱し続ける力は弱いんです」
つまり、“いいにおいがする虫よけ”と“本当に刺されにくくする虫よけ”は別物ということ。効き目をとるかにおいをとるか。シチュエーションで使い分けたほうがよさそうだ。
ちなみに、虫よけ対策をしてもなお、蚊に刺されてしまったときの対処法についても藤田氏に聞いてみた。すると藤田氏は、「一番大事なのは、掻かないこと」とし、こう話す。
「掻いてしまうと毛細血管が傷つき、そこに免疫細胞が集まって、かゆみの反応がさらに強く、長く続きやすくなります。かゆみは基本的に免疫反応なので、冷やすことで反応を抑えることができますし、冷たさによる一時的な麻痺効果でかゆみも感じにくくなります」
今年の夏、蚊に食われるかどうかは、正しいひと手間にかかっている。
藤田龍介(ふじた・りょうすけ)
九州大学農学研究院資源生物科学部門准教授。2018年9月より昆虫科学・新産業創生研究センターの設立に伴い衛生昆虫学分野を設置. 蚊やマダニなどの吸血性節足動物が保有する新規ウイルスの探索と, それらにウイルスの性質について分子生物学的・細胞生物学的解析を実施している. また, 有害外来種の国内分散についての遺伝学的解析, 昆虫由来物質の産業応用研究などを行っている。