■ここでしか飲めない一杯を
ネオ角打ちが若者に受けているのには理由がある。
「ナチュラルワインやクラフトビール、クラフトジンなどは、ボトルで買うと高い。飲食店で飲めばさらに値段が上がります。でも角打ちなら、一杯単位で味見ができる。気に入ればボトルを買って帰れるのも魅力です」(前出の塩見氏)
若い世代にとって角打ちは、興味のある酒を少量から試せる場でもある。一本買うほどではないが、少し飲んでみたい。そうした酒好きの好奇心に、酒屋のカウンターが応えているのだ。
令和仕様にアップデートされた角打ち──。実際のお店がどのような雰囲気なのか気になった本サイト記者は、ネオ角打ちを象徴する一軒、蔵前にある『角打ちカフェフタバ』を訪れてみた。
店に入ると、そこにあるのは、いかにも酒屋の片隅という昔ながらの空気ではない。明るく開放的で、どこかカフェのような雰囲気が漂う。初めてでも入りやすく、女性客や観光客がふらりと立ち寄っても違和感がない。一方で、カウンターに並ぶ酒や軽いつまみには、角打ちらしい気軽さがしっかり残っていた。
代表取締役の関明泰氏に話を聞くと、
「気軽にお客さんに入ってもらいたくて、ターゲット層を広めに取っています。平日はサラリーマン、休日はファミリー層や地元の方、外国の方、女性のお客さんもいらっしゃいます」
とのこと。店で熟成させたウイスキーや地域のビールなど、ここでしか飲めない一杯を求める客も多いという。
「気軽に楽しんでもらうのが一番ですが、日頃飲んでいないようなお酒と、ここで出会ってほしい。このお店で新たな発見や好きなものを見つけてもらいたいですね」(前同)
酒屋の片隅から始まった小さな酒場文化が、再び、酒飲みたちの心を酔わせている。
塩見なゆ(しおみ・なゆ)
酒場案内人。酒場めぐりマガジン『Syupo』を運営し、これまで訪れた酒場は1万軒以上。大手メーカーで製品開発や、企画・広報を経て2016年に独立。テレビ東京『TVチャンピオン極 大衆酒場・せんべろ選手権』での優勝や、TBS『マツコの知らない世界』への度重なる出演など、確かな知識と経験を活かして酒場の楽しさを発信中。