全国各地で被害が相次ぐ「クマ問題」。昨年に続き、今年も各自治体は対応に追われる現況だが、人間と動物との衝突トラブルは、今や日本に限ったものではない。インドでは、“とある動物”による事故が頻発しているというのだ。

「5月1日、インド南部のケララ州の寺院での祭りに引き出されていた象が帰り道に突然暴れ出し、高さ数メートルの木を引き抜いて振り回したり、近くにあったSUVやバイクを投げ飛ばすなどの大惨事に。1人が死亡、1人が重傷を負う事故が起きたといいます」(通信社記者)

 インドの宗教祭りに動員されたゾウによる事故は、2025年1月や6月にも立て続けに発生しており、何人もの死傷者が出ているという。穏やかで優しい、動物園の人気者であるゾウに、いったい何が起きたのか……。

 NPO法人アフリック・アフリカ理事、『アフリカゾウと生きるプロジェクト』を運営する岩井雪乃氏は、「理由は断定できない」と断りを入れつつ分析する。

「こちらはインドゾウかと思いますが、飼いなされたゾウでも、慣れない環境では興奮状態になりやすいんです。お祭りという場で、人間も多くて熱気があふれた状態。さらに花火や爆竹で光も音も激しかったでしょうから、何かの拍子に暴れるスイッチが入ってしまったのかもしれません」

 ちなみに、ゾウは決して“おとなしい”生き物ではない、と岩井氏は続ける。

「日本の動物園でもゾウの事故は多いです。ペットの犬でも何かの拍子に噛んでしまうように、どんなに人に慣れた動物でも、カッとなった突発的な行動は管理しきれない部分があります。また、加害する意識がなくてもゾウは体が大きいですから、動いたはずみに誤って壁に飼育員を挟んでしまった例もあります」

 実際、2025年10月には『沖縄こどもの国』で飼育員の負傷事故、同年11月には『市原ぞうの国』で死亡事故が発生している。近年では、アクシデントを回避するために“直接触れる飼育”ではなく“人が檻に入らずに管理する飼育”をする『準間接飼育』に取り組む風潮ができつつあるという。

 こうした痛ましい事故は飼育下でも起きるが、野生の象だと、事態はさらに深刻だ。

 実は、ゾウによる獣害問題は世界中の生息地で発生しており、年間の死亡者数はタンザニアでは50人、スリランカでは100人、インドに至っては400~500人にものぼる。

「エサとなる農作物を求めて畑に侵入し、そこで人間に遭遇してしまった末に事故が起きることがほとんど。ゾウは臆病な動物ですから、驚いて防御反応を取った結果、襲撃という行動をとってしまうんです」

 なお、ゾウの攻撃方法としては、鼻で掴んで投げ飛ばしたり、頭突きをしたりするというもの。とどめには足で押しつぶすというから、人間はひとたまりもないだろう。

「私自身がタンザニアでゾウの獣害対策に取り組んでいるのですが、私の友人はゾウ被害で亡くなりました。深夜に8頭のゾウが作物を狙って村に侵入したのですが、明朝1頭逃げ損ねて村に残ってしまった。村人たちに取り囲まれて7~8時間、水も食べ物もないままで睨み合い状態。ゾウはパニックと怒りが頂点になり、襲いかかってしまったんです」

 食べ物欲しさに人里に下りてきて、そこで出遭った人間にパニックになった末の攻撃。ここまで聞くと、まるで日本のクマ問題に共通するものを感じる。