■来た球に本能で反応好打者の必須条件!

 そんな森下ですが、今シーズンは一段上のレベルに上がったのは間違いないですね。打撃三部門ではテルと激しく競い、ホームランでは森下がリード。放物線の描き方が、まさにホームランアーチストのそれです。

 森下は新人時代から、変化球打ちのうまさは抜群でした。普通の新人はプロの変化球に苦戦します。アマチュアではまず、見ないような鋭い変化をしますから。

 しかし、森下にはそれがありませんでした。逆に真っすぐに弱い印象がありましたが、それも年々、克服してきました。

 今では、どんな球も自分の形に引き込んで、フルスイングしています。ちょこんと当てに行くようなバッティングは、ほぼ見られません。おそらく森下は配球を読んで打つのではなく、来たボールに反応していくタイプだと思われます。

 バッテリーサイドからすると、こういうタイプが一番、厄介です。特に調子が良いときは、何を投げても打たれますから。

 一方で、配球を読むバッターは、裏をかけばいい。

 ヤクルトや巨人で活躍したラミちゃん(アレックス・ラミレス)が、まさに配球を読む典型でした。こっちの配球を読まれたら負けだし、裏をかくことさえできれば、思惑通りに打ち取れる。

 でも、今の森下には配球勝負が通用しません。それは優れたバッターの条件です。結局、ピッチャーに、いいボールを投げてもらうことでしか抑え切れないんです。長嶋さんに限らず、名球会に入っているようなバッターのほとんどが森下タイプだと思います。

 森下にとっては、テルの存在も大きいですね。2人が刺激し合えば、タイトル争いはますます熾烈になり、優勝もグンと近づくはずです。

矢野燿大(やの・あきひろ)
1968年12月6日生まれ。90年ドラフト2位で中日ドラゴンズへ入団。97年オフにトレードで阪神タイガースへ移籍すると、正捕手としてチームの躍進を支え2度のリーグ優勝に貢献。