■20代のころは「仮面ライダーのお兄さん」扱いに反発していた時期もあったけど…
井上 作品づくりの内容に関しては、スタッフそれぞれの熱意が込められたものになっています。たとえば、脚本は『牙狼』も担当した田口恵さんですが、今回も“ここはこうがいいんじゃないか”みたいに。スーツを造形してくれる人たちも、監督とすり合わせたりして。そういうふうに作られています。
だから、僕が全部監修しているかと言うと、もう僕の手からは結構離れています。それぞれが、作品を良くしてくれる。作品ってそうやってできるんだな、と思いました。
――井上さんが総監督のような立ち位置だと思っていました。
井上 もちろんクオリティに妥協しないように頑張っていきますけれど、まずは形にしてお届けするのを目標にしていますね。(松田に)すみません、僕だけしゃべっちゃって(笑)。
――松田さんは今回、どういう経緯で『ジサリス』に携わることになったんですか?
松田 何気なく、YouTubeでまーくん(井上)の製作過程を観てたんですけど、ある日僕が呼ばれて。その場で“今度、『ジサリス』に出演してもらえないか”って話になって。最初はエキストラ的にカメオ出演というか、チラッと出る程度だと思ったので“全然行くよ”くらいの感じで言ってたら、結構ガッツリした役で。“おおっ!”って感じでしたね。
――なるほど! それで出演することに。
松田 YouTubeで対談をさせてもらったんですよ。その時が、すごく印象的で。
俳優としてキャリアの中に特撮作品があると、それをネガティブに感じる人、ポジティブに感じる人、ちょうど真ん中に感じる人がいるんです。僕は若い頃、どちらかというとネガティブ寄りで。20代のころ周囲に“仮面ライダーのお兄さん”と呼ばれることに反発していた時期があるんですよ。
でも、そこから30代になって色々な役を経験して行く中で、ある時に『龍騎』を全部見直したら、めちゃめちゃ面白いな、と思って。こんな素晴らしい作品に、1年間も重要な役で出させていただいたのかと。それなのに“俺は仮面ライダーのお兄さんじゃねぇ!”とか言っていたのかと思うと、申し訳ない気持ちになりました。
そこからあらためて自分の作品のファンになり、自分が演じた作品にも、すごく誇りを持つようになりました。
それで、まーくんとの対談の中で、“『仮面ライダー』に出演したことをネガティブに捉えている人いますよね”という話になったとき、“何でそういう考え方するんだろう。誇りじゃん”みたいな話をしていただいたんですよ。僕は誇りに思うようになってまだ少ししか年月が経っていなかったんですけど、恐らくまーくんは、一点の曇りもなく誇りに思っている人。その姿を見た時に、“あ、すごいな!”と思いました。
同時に、自分発信で特撮作品を製作しようとしていたのが衝撃で。“そんなことが出来る俳優がいるんだ!”と。楽しそうだから、そこに参加させてもらえるならどんな形でも絡ませてほしいと思っていました。だから、最初はエキストラ出演だと思っていたんですけど……。
――「釣り人役で出る?」みたいな話を、YouTubeで話していましたね。
松田 そうそう(笑)。ただ、迷わずに何かの形で出られるのであれば、“楽しそう”“絶対乗る!”って感じでしたね。
まあ、現場の苦労は計り知れないものがありますけどね。僕ら俳優は現場に立つとテストや本番がありますけど、まーくんは合間に全部YouTubeを回しているので……自分の出番がない時も、全部“出番”なので。頭が下がる思いでした。