■ビジネスではなく、気持ちでやらないと続かない特撮づくり

――ぜひ、『仮面の騎士』を実写化して欲しいですね。(※松田は趣味で自作小説『仮面の騎士』を執筆している)

松田  ストーリーは書きますけど、チームを集めて前進していくって、とんでもない体力だと思うんですよ。会社経営をしていくのと一緒です。

 現場でも、まーくんが監督と色々なミーティングをしているのを見て、“自分の出番が終わった後もミーティングまでしなきゃいけないのか!”と思って。そりゃそうか、と思うと同時に、とんでもないことをやっているなと思いました。

――なるほど~。

松田  で、いま『ジサリス』の編集もチェックして。妥協した方が絶対に楽じゃないですか。でも、“絶対にここはダメです”とか、何度もブラッシュアップさせている姿を見ていると、尊敬しますね。

井上  僕じゃなくて、スタッフがキツいだけですよ(笑)。

――以前、『ジサリス』の企画段階で“最新の仮面ライダーと配色が被る(※)”ということがあった件をYouTubeに投稿していました。ショックを受けていた様子を少しギャグっぽくしていましたが、こうやって話を聞いていると、結構キツかったんでしょうか。

(※『仮面ライダーリバイス』の主人公ライダー、リバイのこと)

井上  色で決めたので……さすがにマゼンタにするわけにもいかないし、僕が青というのもおかしいじゃないですか。で、“ピンクじゃない。マゼンタだ!(※)”って言ってたから、じゃあピンクでいいかな、という安直な考えでしたね。

 そしたら、ピンクの仮面ライダーが出てきて、頭を抱えましたね。だって、最初のプロジェクト名は『PINKの特撮創るプロジェクト』でしたから。

 まあ、最初のころと比べると、だいぶ出来上がってきましたね。今日、完成披露試写が出来るのが、幸せです。3、4年くらいかかりましたからね。

(※井上が演じた『ディケイド』はマゼンタだが、ピンク色と誤解されがち。それにちなんだ公式ネタ)

――全12話ということですが、細かいCGの作業などは残っているんですか?

井上  ガチな話をすると、放送前に海外の審査を通さないといけないんですよね。それで、通ったところでそれが買取されて放映されるかは別の話。作らないと土俵にも立てない状態なんです。

 だから、そこに向けて頑張っています。『仮面ライダー』や『スーパー戦隊』が2、3年遅れで向こうで放送されるのは、そういう理由です。完成して、審査されて、買取などがあって、放映という流れですね。そういう調整が難しいんですよね。

――なるほど~。

井上  ただ、これは“卵が先か鶏が先か?”じゃないですけど、“買い取られる保証があるから作る”のと、“作ってから結果的に買取される”は違うじゃないですか。プロデューサー目線だと買い取られる保証があるから作りにいきたくなるんですけど、このパターンはないんですよ。

 だから、いかに手探りで……本当に夜中の船旅のような気持ちです。

――船旅、ですか。

井上  ビジネスラインも必要ですけど、作品づくりの根本は熱い何かがないと作れないな、というのは実感します。特撮は、まさに……。仮に僕がビジネスでやっていたら、挫折していたと思います。気持ちでやらないと続かないですね。

プレミア試写会での井上さん ©シスト/AICライツ

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井上正大(いのうえ・まさひろ)
 神奈川県出身。株式会社AICライツ代表取締役社長。2009年に平成仮面ライダー10作記念作品『仮面ライダーディケイド』にて“門矢士/仮面ライダーディケイド”として連続テレビドラマ初出演・初主演を飾る。役者業以外でも舞台の演出やアニメ制作会社など、多方面でクリエイティブな活動をしており、2021年4月からはオリジナルの特撮ドラマを製作する企画を立ち上げ、それが『ジサリス』として実を結んだ。

松田悟志(まつだ・さとし)
 大阪府出身。ノースプロダクション所属。2002年、平成仮面ライダーシリーズ『仮面ライダー龍騎』で“秋山蓮/仮面ライダーナイト”として、初のテレビドラマレギュラー出演を飾り、一躍知名度を上げる。現在も『龍騎』に関するイベント出演など精力的なファンサービスを行っているほか、2022年3月にはオリジナル創作サークル「仮面の騎士」を設立。自叙伝や創作小説、音楽活動など、役者業以外も活動の幅を広げている。