家計を守るカギは「電気代」ではない――節約のプロが教える、酷暑時代の家計防衛術
「今年の電気料金の上昇は、家計にとって間違いなく痛手になります」
そう話すのは、節約アドバイザーの丸山晴美氏だ。
2026年5月請求分から、再生可能エネルギーの普及費用を利用者が負担する「再エネ賦課金」は、1kWhあたり4.18円と過去最高を更新した。さらに、円安や世界的なエネルギー情勢を背景に、火力発電に必要な燃料の輸入コストも高止まりしている。
「電気料金の単価が上がっているところに、猛暑でエアコンの使用時間が延び、使用量そのものも増えています。“単価の上昇”と“使用量の増加”が重なるため、請求額に強い負担を感じる家庭は多いでしょう」(以下、コメントはすべて丸山氏)
とはいえ、節約のためにエアコンを我慢するのは得策ではない。
「今の猛暑では、エアコンは贅沢品ではなく命を守るためのライフラインです。無理をして熱中症になれば、通院や入院でかえって大きな出費になる可能性もあります。エアコン代は、削るべき支出ではなく、生きるために必要な固定費と考えるべきです」
では、「エアコンは24時間つけっぱなしのほうが安い」という説は本当なのか。
「どんな場合でも、つけっぱなしのほうが得というわけではありません。エアコンは、暑くなった部屋を一気に冷やすときに多くの電力を使うため、日中の30分程度の外出なら、つけたままのほうが安くなる場合があります。一方、長時間留守にするときまで運転を続ければ、当然その分だけ電力を消費します」
つまり、外出時間に応じてON/OFF使い分けることが節電のポイントになる。
費用対効果の高い節電術として、丸山さんが挙げるのは、『①風量を自動運転にする』『②窓から入る熱を遮る』『③扇風機やサーキュレーターを併用する』の3つだ。
「風量を弱や微風に固定すると、部屋が冷えるまでに時間がかかり、かえって電気を使うことがあります。自動運転で一気に冷やし、設定温度に達したら弱い運転に切り替えるほうが効率的です」
遮光カーテンやすだれで日差しを遮り、冷房時の風向きを水平にして空気を循環させれば、設定温度を必要以上に下げずに済む。一方、室外機をカバーや濡れタオルで覆う方法は、通気を阻害することで排熱を妨げて冷房効率を落とす恐れがある。
「家計を守る方法は、節電だけではありません」
丸山さんは自治体の補助制度にも目を向けてほしいと話す。省エネ性能の高いエアコンや冷蔵庫への買い替えを支援する制度のほか、高効率給湯器や断熱窓の導入に補助金を出す自治体もある。また、一部地域では、高齢者世帯や住民税非課税世帯などを対象に、熱中症対策としてエアコンの購入・設置費を補助しているという。
「制度は自治体ごとに対象者や申請期間、予算が異なり、先着順で終了することもあります。家電を購入してからでは対象外になる場合もあるため、必ず購入前に自治体のホームページや窓口で確認してください」
ただ、こうした工夫を駆使してもなお、電気代の上昇分をすべて補うのは難しいという。
「電気代だけで何とかしようとせず、通信費や保険料、サブスクリプションなど、家計全体の固定費を見直すことが大切です。格安SIMへの変更や、使っていない定額サービスの解約なら、月数千円単位で支出を減らせる場合があります」
一方で、物価も電気代も上がり続けるなか、あらゆる支出を削ろうとすれば、やがて「節約疲れ」に陥ってしまう。丸山さんは、節約とは生活水準をただ下げることではないと話す。
「大切なのは、メリハリのあるお金の使い方です。なんとなく買っているお菓子やジュース、利用していない定額サービスを見直し、その分を家族で本当に楽しみたいことへ回す。節約によって生活を貧しくするのではなく、不要な支出を減らすことで、むしろ暮らしの満足度を上げていくことが理想です」
エアコンを消して暑さに耐える。それが今年の家計防衛ではない。
命を守るために必要な電気は使う。その代わり、減らせる支出を見極める。酷暑が当たり前になりつつある今、求められているのは「何もかも我慢する節約」ではなく、「使うべきところは使う節約」なのかもしれない。
丸山晴美(まるやま・はるみ)
節約アドバイザー、ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー。22歳で節約に目覚め、自身の経験を生かして2001年に独立。家計管理や節約、お金の使い方に関するアドバイスをテレビ、ラジオ、雑誌、講演などで幅広く行うほか、『年間100万円!がんばらなくても貯まるお金の習慣』(宝島社)など著書・監修書も多数。