日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回、戸田氏が注目したのは、チャイナマネーの侵食がここまできたかと不安視される「中国人による寺の爆買い」問題についてです。

 日本の伝統や地域コミュニティの象徴である神社仏閣が今、思わぬ形で海外資本の標的となっています。近年、中国のソーシャルメディア上では「数百万元で歴史ある日本の寺院が購入できる」「寺のオーナーになることが日本移住の近道」といった、海外投資家を誘う広告が目立つようになってきました。実際に中国資本による国内の寺院買収や、宗教法人格そのものを売買対象とする取引が頻繁に報道されるようになっており、中には買い取った歴史ある寺院を民泊や民宿へ改造しようとする具体的な動きまで…。

 背景には日本国内の寺院の過疎化や後継者不足があります。文化庁の調査では約8割の法人が人口減少のマイナス影響を訴えており、事実上活動を停止している「不活動宗教法人」は2024年末時点で5019法人(うち仏教系が2996法人)にのぼります。これら休眠状態の法人がターゲットになり、ネット上の仲介サイトでは「歴史あるお寺譲ります」として1億2000万円で売り出される例や、約3000坪の土地付きで「首都圏で利回り15%以上の納骨堂あり」とうたう2億円の物件、「M&A案件」として8億4000万円で販売される事例など、生々しいマネーゲームが公然と行われています。買い手である中国の富裕層の主な目的は、年間5万ドルの外貨持ち出し規制をかいくぐる資産の海外移転や、お布施などが原則非課税となる優遇措置の獲得です。

 しかし、通常の不動産取引とは異なり、深刻なトラブルや事件も露呈しています。2024年7月には、実態のない京都の宗教法人の代表役員登記を不正に変更するため、責任役員会の議事録を偽造して法務局に提出した元司法書士らが京都府警に逮捕されました。また、1億5000万円で売買された寺院で、購入側が檀家に無断で本尊や墓石を撤去し、敷地をさら地にした事例や、兵庫県の寺院が買収されて外国人の「バーベキュー別荘」と化し、古くからの門徒が嘆く実態も報じられています。ネット上でも「先祖代々のお墓が知らないうちに外国資本に買われるのは恐ろしい」「国は規制を強化すべきだ」といった声が聞かれ、危機感を募らせている人は少なくありません。