■粗さが目立った『田鎖ブラザーズ』後半
たとえば、第8話の段階でもっちゃん(山中)の田鎖両親の殺害動機は、自身が営む店の立ち退き問題が発端であるとされていた。しかし、知り合いの人間を殺すほど店に執着する人はいないだろう。「母とやってきた店を守りたい」だとしても、母との関係がわかる描写は少なく、せいぜい、母思いの良い息子というぐらいで、この説得力のなさに引っかかった人は多いはずだ。
さらにその殺害をけしかけたのは、両親殺害事件を担当していた刑事・笹岡(柳憂怜/63)だったが、いくら笹岡が五十嵐組とズブズブだったからとはいえ、現役刑事がヤクザ組織のために、そんな大胆なことをするだろうか?
また、田鎖兄弟に協力する質屋・足利晴子(井川遥/50)は、漁師だった父が密造銃の取引の失敗で殺されたことを、兄弟の父・朔太郎(和田正人/46)のせいだと考えて毒殺に及んだが、当時16歳だった彼女がそこまでの実行力があるとは思えない。とにかく不自然な描写、動機が多かったのだ。
岡田と染谷の演技で重厚には見せていたが、脚本があまりに粗すぎた。ストーリーに登場人物それぞれの行動を当てはめていくという、ご都合展開なため「?」な納得いかない場面だらけ。結果、ドラマに入っていけず、離脱組が続出したのだろう。
新井プロデューサーは、10月から始まる横浜流星(29)主演の金曜ドラマ『LOST10』を手掛けることが発表。こちらは、『Nのために』や『最愛』の塚原あゆ子が演出、映画『国宝』の奥寺佐渡子が脚本と、完璧な制作陣による完全オリジナルのヒューマンサスペンス。今度こそ期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。