「夏休みの宿題、ギリギリにやってたタイプでしょ?」

 大人になっても語られる、夏休みの過ごし方。自由研究に読書感想文、無数のドリルたち……夏休みの宿題との格闘は、時代を超えて今なお繰り返されている。だが今、そんな夏の風物詩が過渡期を迎えているという。

 公立小学校で23年間教壇に立ち、人気マンガ『ドラゴン桜』の指南役も務めた教育評論家の親野智可等氏は、こう話す。(以下、コメントはすべて親野氏)

「夏休みの宿題は、将来的になくなる方向に進むと思います。そもそも先進国で夏休みに宿題があるのは、日本だけなんです。欧米各国には、基本的に夏休みの宿題がありませんから。それどころか、フランスに限っては、なんと1956年から小学校で“書く宿題”が法律で禁止されているんです」

 法律で禁止されているとは驚きだが、そもそも9月から新学期が始まる欧米にとって、“夏休み”は学年が切り替わるタイミングの休暇である。つまり、日本の学校教育制度における“春休み”。日本でも春休みに宿題が出ないのと一緒だ。

「そのうえ欧米各国の夏休みは、2か月ほどと長いんです。アメリカでは、州によって2か月半もあり、勤勉と言われるドイツでさえ2か月あります。大人も長期休暇を取るため、子どもたちは家族旅行や林間学校のようなアクティビティに取り組みます。そうすることで非認知能力が育ち、やがて学力向上にもつながるんです」

 一方、日本の小学生は約40日間、宿題に追われながら過ごしている。その主たる目的は、授業がない長期休暇の間にも学習の習慣を定着させることなのだが、

「日本のGDPはドイツに次いで4位ですが、ドイツは約8000万人と、日本の3分の2ほどの人口です。夏休みにも勉強し、のんびりせずに大人になったはずなのに、日本は1人当たりのGDPは、夏休みの宿題がないドイツのほうが圧倒的に上。実は、宿題で学力が上がるという明確なエビデンスはないんです」

 それでも日本の学校教育が膨大な夏休みの宿題を出し続けるのはなぜなのか──。

「かつて高度経済成長期の日本では、上司に言われたことを的確にこなす“優秀な歯車”が求められていました。だから計算や漢字のドリルなど“量をこなす”課題が多い気もします。日本の教育は、その時代の発想からあまり変化がない。それでは“学力”というものを狭く捉えすぎです。宿題をたくさんすれば優秀な人が育つという考え方は見直す必要があると思います」