無意識にポロッと飛び出す“ひとり言”。「うわ、あっちぃな」「よし、このメールは送ったぞ」「あれ? リモコンどこ置いたっけ?」など日常の様々な場面で口にしてしまう人も多いはずだ。

 しかし本人に悪気はなくても、繰り返し聞かされると周囲はゲンナリしてくるのも事実。「お前の気持ちなんて知ったこっちゃねぇよ」となるのである。こうした“ひとり言ハラスメント”は職場や家庭の雰囲気を悪化させるだけでなく、ひどいケースになると電車内でブツブツつぶやいて周囲をギョッとさせることもある。

 そもそもなぜ人はひとり言を発するのか? 脳内科医で『なぜうまくいく人は「ひとり言」が多いのか?』(クロスメディア・パブリッシング)などの著書を持つ加藤俊徳氏は「周りが不愉快になるひとり言でも、当事者にとっては意味がある」とそのメカニズムについて解説してくれた。

「人間は自分にとってまったくプラスにならない行動は続けようとしません。すべての行為は基本的に自分のために行われています。たとえば“もうこんな時間か……”と仕事場で口にする場合、重要なのは自分が言った言葉を自分の耳でもう一度聞いているという部分なんですね。世の中には頭の中だけで言葉を処理できる人と、いったん外に声を出し、それを耳から聞くことで理解できる人がいる。声を出さないと頭のスイッチが入らないタイプの人間が少なからずいることは抑えておくべきでしょう」(加藤氏=以下同)

 専門的には頭の中だけで使う言葉を「内言語」、口から声に出す言葉を「外言語」と呼ぶのだという。そして内言語をうまく使えない人ほど、外言語を使う傾向がある。それは外言語にすると、実際に耳へ聴覚刺激が入るというメリットがあるからだ。

「特に独身の中高年はひとり言が増える傾向にあります。その理由は明白で、他人との対話が少ないこと。会話というのは、他人と自分の考えを対比する行為でもあるんですよ。ところが普段あまり他人と話していない人は、自分と自分を対話させることで自己確認しているんです」

 こうしたひとり言も、よく監察してみるといくつかの類型に分類されることがわかる。職場でよく耳にするのは【タスク確認系】。かくいう『ピンズバNEWS』編集部にも「今日はここまでやっておくか」「よし、これは終わらせたぞ」「そろそろ帰るかな(なかなか帰らない)」などブツブツPCモニターに向かってつぶやく50代の男性社員がいる。

「これは自己達成感を得るためのひとり言ですね。口に出すことによって、自己報酬を得ているのは明らかです。いわばTo Doリストにチェックを入れていくような感覚なのでしょう。いちいち口に出さないと次に進めないというのは、別の観点から見ると脳に疲労が溜まっている可能性もあります。しっかり眠り、心身が満たされていれば、そこまで言葉に出す必要はないですから」