■嫉妬に狂う山里を演じる森本慎太郎の凄み
山里はとにかくストイックだ。相方探しに奔走するが「関西弁の漫才したいから」「関東人おもんないわ」と言われ、心に怒りを溜めていく。デスノートのように、ドロドロとした黒い感情をノートに書き殴る山里の狂気は、ちょっと怖いぐらいだ。
そして、関東人をバカにしているという思い込みの感情がガソリンとなって、ますます芸人として成功することに意欲を燃やすのだが、他人にも同じ熱量を求めて感情をぶつけてしまう。当然、コンビを組んだ相手も徐々に追い詰めてしまう。お笑いをやる楽しい気持ちや、実力のある同期を認める余裕などいっさいなく、漫才の完成度を高めて早く周囲に認めてもらうことだけしか頭にないのだ。
だから、相方を思いやる気持ちもない、怖い人になってしまう。何より、同期で成功を収めているヘッドリミットを見る目が、とにかくすごかった。嫉妬に狂い、燃え上がる炎で身を焦がしてしまうほどの感情が全身を覆っているのだ。
そして、“これでも感情を抑えている”というのが分かる芝居をする、森本の本気度に息をのんだ。ステージで歌い、セクシーで力強いダンスを魅せつけるアーティストでも、軽快なトークで笑顔を見せるアイドルでもない。自分を追い詰め、相方を追い詰め、ドラマを見ている人の心さえも苦しめてくる、俳優・森本なのだ。ヘアスタイルや衣装は、役の補足でしかない、森本の体からにじみ出てくる役作りに感情を持っていかれてしまった。
若林と、山里、暗黒時代をそれぞれがどう生きていくのか、もっともっと見せつけてほしい。(文・青石 爽)