「スリーブに入れれば安心」では終わらない、高額トレカを待つ“金庫の世界”

 某カードショップの店長によれば、カードを守る最初の一歩は、やはり「スリーブ」だという。

 「一番簡易的なのはスリーブですね。カードを薄いフィルムで覆って、擦り傷や汚れから守る。高額になってくると、その上から硬質のローダーに入れる人が多くなります」

 さらに大切な一枚となれば、磁石でケースを固定する「マグネットローダー」なども選択肢になる。

 スリーブとローダーを組み合わせることで、擦れだけでなく折れや曲がりなどの物理的なダメージからも守りやすくなる。またカードは紙製品だけに、湿気による反りや紫外線による退色などにも注意が必要だ。実際、現在販売されているローダーにはUVカットをうたう製品も少なくない。

 だが、ここまではあくまでカードを美しい状態に保つための「保存」の話。

 100万円、200万円というカードを何枚も所有するようになると、今度は「どこに置いておくか」という「保管」が問題になってくるという。

 「高額カードになると家庭用の金庫に入れている人もいます。ローダーに入れて傷や折れを防いでも、ローダーごと持っていかれたらどうしようもないですからね。カード自体が小さいので、数百万円、1000万円という金額でもコンパクトにまとまってしまう怖さがあります」(前同)

 冒頭の事件を考えれば、決して大げさな話ではない。そして、さらに上がある。

 「数百万円クラスのカードを複数枚持っているようなコレクターでは、銀行の貸金庫を利用しているという話も聞きます。そこまでいくと『カードを保管している』というより、貴重品や資産を管理している感覚に近いですよね」(前同)

 実際、高額トレカを自宅の金庫から銀行の貸金庫へ移したというコレクターの例も存在する。

 もちろん、銀行の貸金庫を利用すれば年間の利用料が発生する。家庭用金庫を購入するにもお金がかかるし、カードの状態を維持しようと思えばローダーや湿気対策などにも気を配らなければならない。

 つまりトレカは、一定の価格を超えると「持っているだけでお金がかかる」のである。

 「カードって面白いもので、値段が上がれば上がるほど扱いづらくなるんですよ。数百円なら普通に触れるけど、100万円のカードだったら気軽に触れない。500万円なんて値段になったら、落とすことすら怖いですよね」(前同)

 確かに、500万円のカードを手に入れたら嬉しい。しかし、その瞬間から「傷を付けない」「湿気から守る」「盗まれない場所に置く」といった管理もついて回る。

 しかも、今回のような窃盗事件が起きている以上、「自分が何を持っているかをどこまで人に見せるのか」という問題まで考える必要が出てくるだろう。高額カードをSNSで披露する楽しみと、資産を所有していることを公にするリスクは、表裏一体ともいえる。

 パックから奇跡の一枚を引き当てる――。トレカ好きなら誰もが夢見る瞬間だ。

 ただ、そのカードに数百万円という値段が付いたとき、考えるべきことは「いくらになったか」だけではない。

 500万円のカードを引いたら、あなたは今夜、それをどこに置いて寝るだろうか。

 高額トレカが“資産”になった現在、その答えまで用意しておくことが、コレクターには求められる時代なのかもしれない。