8月3日には熊本市と佐賀市、福岡の太宰府市が記録し、酷暑日となった年間延べ地点は過去最多となった。気象庁が今年の4月から最高気温40度以上の日を「酷暑日」と定めてからというもの、猛暑を越えた“酷暑”が日本各地で発生している。

「そんな中、山あいの標高の高い地域と並んで、都心からも近い“千葉県の勝浦市”が避暑地として注目され始めています」(旅行雑誌編集者)

 山に囲まれた平野で、暑くなりやすいはずの関東近郊。今年の7月の最高気温の平均は東京都が31.8度、埼玉県さいたま市が32.6度と気温が高い。その中にあって、千葉県の勝浦市だけは29.1度と“猛暑知らず”だったのだ。

 なぜこのようなことが起きるのだろうか──。

 気象予報士で『ウェザーマップ』気象キャスターの佐藤圭一氏は、勝浦を“偶然が重なった奇跡の地”と話す。

「まずは沿岸の海底の深さです。海が近いだけなら日本全国にそのような地はありますが、勝浦の沖合いは急激に海が深くなるという特徴があるんです」

 海は深くなればなるほど水温が下がる、それゆえに、水深が深い海の近くに位置する勝浦市は気温が上がりにくいというのだ。今年の7月に30度以上の「真夏日」になった日数を同じ房総半島に位置する隣の館山市と比較すると、勝浦市は11日、館山市は18日と明らかに勝浦市のほうが涼しい日が多い。

 それには、海岸線の南側が崖となって南南西の海風が入りやすいという“地形”が関係しているのだという。

「夏場に勝浦へ南寄りの風が吹くと、表面の暖かい海水が流され、それを補うために深海の冷たい海水が湧き上がる“沿岸湧昇”という現象が起きます。この冷たい海面を通り過ぎた風が吹き込んで、天然の“クーラー”の役割になるため、勝浦市全体の気温が上がりにくくなっているのです」

 近隣の館山市などはこの地形的条件が勝浦ほど揃っていないため、冷たい海が近くにあったとしても、勝浦ほど気温が下がらないということのようだ。

「冷たい海風で涼しい地域は東北などにもありますが、勝浦とまったく同じ理由で涼しい地域は国内にはなかなか見当たりません。ちなみに世界的に見ると、アメリカのサンフランシスコが勝浦と同じように湧昇流などの影響で沿岸部は涼しいようです」

 勝浦は世界的に見ても珍しい“奇跡の避暑地”だったのだ。