「求人を見ても、“原則出社”という企業数はこの2年で3倍ほど増えています。一方、“フルリモートで働けます”という求人はピーク時に比べて3割ほど減少している。全体として、テレワークが減っていることは間違いないでしょう」(ビジネス誌ライター)

 コロナ禍を機に、社会の間で一気に広まったテレワーク(在宅勤務)。ところが、ここに来て“出社回帰”の動きが散見されるようになってきた。もちろん職種によってテレワークに向き、不向きがあるのは事実だろう。介護、医療、土木、飲食などマンパワーが求められる業界は、どうしたって現場に出向くことが必須となる。

 だが不可解なのは、これまでテレワークと親和性が高いとされ、テレワークを積極的に推し進めてきたIT系企業で“テレワーク離れ”が顕著だという点だ。

「7月末にIT大手のGMOインターネットグループが在宅勤務を原則廃止にして大きな話題となりましたが、他にも、LINEヤフー、楽天グループ、アクセンチュアなど、在宅勤務を推奨してきたインターネット関連やコンサルなどの大企業が出社回帰を進めています」(前同)

 この流れは、日本に限ったことではない。このIT企業の“脱・フルリモート”は世界的な潮流になっているという。

「むしろアメリカなどのほうが早く出社回帰が進んでいるといえるでしょう。それこそGAFAと呼ばれる企業が最たる例で、Amazonは基本的に週5日出社、MetaやGoogleは週3日だったはず。それからイーロン・マスク氏は強固なテレワーク反対派として有名ですよね。頻度は異なるものの、出社に戻っているという流れは確実にあります」(同)

 これはいったいどういうことなのか。ITやウェブ業界に特化した求人・転職サイト「レバテック」リクルーティングアドバイザーの芦野成則氏が解説する。(以下、コメントはすべて芦野氏)

「大きな要因は、AIの普及です。たとえばAIが発達すると、エンジニアの人たちがやってきたコーディング……コンピュータのプログラミング言語を使ってコードを書くという作業は、今ではAIがかなりの部分でやってくれます。なので今、エンジニアに求められるのは、“そもそも何を作るんだっけ?”とか“どういうものを作ろうか”などといった、人と人とのコミュニケーションが求められる部分なんです」

 完全テレワークでも可能な作業はAIがやってくれるようになった今、求められるのはAIにやらせる内容を決めるために人間同士で密な話し合いが必要ということのようだ。

 出社回帰がトレンドとなってきた理由は、それだけではない。

「もう一つ、最近よく聞く悩みが、若手の育成面です。コロナが始まってリモートが進む中、IT企業の中には業績が伸びて若手メンバーをかなり多く採用したところもありました。ところが若手メンバーが多くなると、リモートでは上の人は若手がどこで困っているのか見えにくい。若手側も誰に相談していいのかわからない。そういう難しさがあるんです。ですから出社に戻し、コミュニケーションを取りながら若手を育てようという企業が増えているのでしょう」

 コロナ禍で実際にテレワークを導入してみたものの、そこでデメリットが可視化されたという面もあるということだろう。

「結局、リモートはチャットやメールなど“文字”ベースでのコミュニケーションが多くなるんですよね。ただ、それだとコミュニケーションのスピードが低下してしまう。さらには精度も低くなる。一番大きいのはそこだと思います。面と向かって話すのと比べて、テキストだけだと微妙なニュアンスがどうしても伝わりきらないんですよ」