全国各地で厳しい暑さが続く中、手放せないのがペットボトル飲料。外出時はもちろん、熱中症対策として枕元に水を置く人も少なくない。

 そこで気になるのが、一度口をつけた飲み残しペットボトル。夜に飲んだ水を翌朝もゴクリ──。だが、そのひと口で、ボトルの中にはすでに変化が起きている。

「直接口をつけると、飲料の一部が唾液とともに逆流し、口の中の細菌がボトル内へ入ります。私たちの研究では、飲んだ直後の飲料1ミリリットルから1000個レベル、飲み口からも1000~1万個レベルの細菌が検出されました」

 そう話すのは、臨床化学が専門の新潟大学大学院保健学研究科・佐藤拓一教授だ。

 食中毒菌まで増える心配はないのか。

「研究では、飲み残しの中でブドウ球菌が増殖した例は確認されていません。ブドウ球菌は人の皮膚や、微量ながら口の中にも存在し、その中には食中毒の原因になるものもありますが、それを検出できる条件でも増殖は見られませんでした。ただし、危険がまったくないとは断言できません」(前同)

 菌の増え方を左右するのが、飲料の種類だ。飲用後の麦茶を37度で1日保存すると、1ミリリットル当たり1万個近くだった菌が約100万個に増えた。一方、スポーツ飲料とオレンジジュースでは、ほとんど検出されない水準まで減少した。

「大きな要因の一つがpHです。7付近が中性で、数字が低いほど酸性度が強くなります」

 スポーツ飲料はpH3.48~3.88、オレンジジュースは3.93~3.94と酸性が強い。酸性の液体では細菌の増殖や栄養の取り込みが抑えられる。一方、麦茶はpH5.77~6.08と中性に近く、菌が増えやすかったと考えられる。

「コーヒーやエナジードリンクも酸性ですが、スポーツ飲料やオレンジジュースほど強くはなく、中性に近い飲料と考えてよいでしょう」(同)

 では、水はどうなのか。

「水は基本的に中性です。進行中の実験では、微生物があまり増えない傾向がありますが、軟水と硬水の違いも含め、最終結果は出ていません。“水なら翌朝も大丈夫”とは断言できません」(同)

 同じお茶でも一様ではない。緑茶を37度で1日保存した研究では、通常の緑茶は平均約1900個から約1万3000個に増えた一方、濃い緑茶は約4500個から約1600個へ減少。カテキン量やpHの違いが影響した可能性がある。

 さらに注意したいのが、カフェオレやミルクティーなど、乳成分を含む飲料だ。

「甘いほど菌が増えるとは限りません。砂糖入りのブラックコーヒーや紅茶では、それほど増えなかった一方、ミルクを加えると無糖でも大きく増えました。糖分より乳成分の影響が大きいと考えられます」(同)

 唾液由来菌を加えたモデル実験では、ミルク不使用の紅茶や烏龍茶、ブラックコーヒーは比較的増えにくかったが、ミルク入りは37度で1日後、1ミリリットル当たり1000万個以上に増える傾向が見られた。